和がき(東松島市東名)カキ養殖に新たな風吹き込む 早稲田大学 3年 吉永朱里

笑顔で牡蠣を見せる阿部さん。今朝採れたての牡蠣を振るまう



「1年中、うまいカキを届けられる」。東松島市東名にある水産卸「和がき」の代表阿部年巳さん(41)は自信を見せる。県内複数の産地からカキを仕入れ、その時期に一番状態のいいものを全国に出荷。むき身出荷が主流の中、鮮度が高い殻付カキにこだわる。「甘みが強く、身に弾力がありプリッとしている」と取引を求める飲食店が後を絶たない。

 阿部さんは地元のカキ漁師でもある。味や旬を見極めて質のいいものを漁師から直接高く仕入れ、新鮮なうちに飲食店に安く販売する。漁師、販売先双方から信頼され、長い関係を築けるメリットがある。「漁師の気持ちが分かるから思いついた」。仲介業者を介さない独自の販売方法は、阿部さんならではのものだ。

 会社を設立したのは東日本大震災から半年が過ぎた2011年12月。県内のカキ養殖は壊滅的被害を受け、阿部さんは父を失った。自宅や漁船も流された。「ゼロからのスタート。宮城のカキを再び全国に売り出したい」。悲しみの中でも、カキへの思いが前を向かせた。

 「漁師は家族経営で漁場の広さも代々決まっている。販売先も限られる旧来漁業のしがみから脱するチャンスだ」。震災というピンチが起業への原動力になった。

 始めは苦しい経営が続いた。それでも取引先の開拓に取り組むうちに徐々に「和がきのカキをまた食べたい」という声が寄せられるようになった。手応えが阿部さんを後押しした。今では北は北海道から南は九州まで、約400店から注文が来るようになった。

 「被災地の産物だからではなく、また食べたくなるカキだから」と言われるほど、取引先の評価は高い。カキは冬が旬だが、「ミルキーで濃厚」と近年注目されつつある夏ガキの販売にも力を入れる。

 「より多くの県産カキを全国に届けたい」と阿部さん。宮城のカキ養殖に新たな風を吹かせる挑戦は続く。

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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