ささ圭(名取市)新たな閖上へ 一歩 東北学院大学2年 波多野里南


 ひとつひとつ型に入れて笹の形を作り、焼き上げる。全国でも珍しい手づくりかまぼこ「希望」。東日本大震災の津波で大きな被害を受けた名取市のかまぼこ店「ささ圭」の看板商品だ。創業当時の味と技術を受け継いでいる。丹精込めて作られたかまぼこを口に含むと、素材本来の優しい味わいが広がる。「おいしい」の声に顔を綻ばせるのは、「ささ圭」の3代目、佐々木堯(ぎょう)さん(26)。

 「学年が上がるように、父の後を継ぐのは当たり前」。そんな考え方が変わったのは、東日本大震災。当時は東京の大学に通う1年生だった。街頭のテレビに流れる津波の映像。映っていたのは紛れもなく故郷・閖上だった。実家、工場、店舗。「もう駄目だと思った」。

 震災から一ヶ月後。やっとの思いで閖上に帰ると、家業は廃業寸前だった。生活することで精一杯の現状の中、父は「会社を存続する」と決断した。幼い頃からずっと父の働く姿を見てきた。不安は大きかったが、父のことを信頼し、反対の言葉は口にしなかった。

 それからは、学生として学ぶ傍ら、家業を手伝った。店を訪れた閖上の人の「再開してくれてありがとう」の言葉が胸に響く。閖上の人たちは待ってくれていた。「このままじゃ終われない」。当たり前だった継ぐ意識が自らの意思へと変わっていった。

 震災から2年経った、大学3年の冬。「継がせてください!」。両親に告げた。「大変な時だからこそ、社員と一緒に働きたい」。先の見えない経営状態と重くのしかかる責任。それでも決意は揺らがなかった。

 「閖上に生かされた。閖上に店を出すのは目標であり、出発点」。来年の五月、閖上に新たにできる商業施設に店を出す。閖上に戻れる安心感と、見通しのたたない不安が胸の中に同居する。「『ささ圭』は、同じ気持ちを抱えて戻ってきてくれる閖上の人たちに寄り添える存在になりたい」。そこには強い信念があった。「新しい閖上で再出発し、共に成長していきたい」。震災から7年半。新たな一歩を歩み出そうとしている。

手づくりかまぼこ「希望」を手にPRするかまぼこ店「ささ圭」の佐々木さん。

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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