【C班原稿】高進商事 「飾れる防災」 商品化
東海大2年 中溝愛、上智大2年 栗原海柚(みゆ)、法政大3年 渡邉匠、武蔵大3年 漢人(かんど)薫平
▲商品を手にする小田原さん。税込9504円でネットを中心に販路を広げる
「防災用品は、目のつくところにあってこそ意味がある」。仙台市宮城野区の「高進(こうしん)商事」社長小田原宗弘さん(48)は力を込める。工場機械部品の卸会社であるにもかかわらず、おしゃれな防災セット「ザ・セカンド・エイド」を手掛け、注目を集める。商品名にはファーストエイド(救急箱)の「次」に活躍してほしいとの願いを込めた。
災害時すぐ手に取ってもらうためには生活空間に溶け込むデザインとサイズが肝心だ。シンプルでおしゃれな外見、本棚に収まるコンパクトさが特長だ。断水中にも体を拭けるぬれタオルや、体温を保つアルミ製ブランケットなど、厳選13品を納める。既存品にはないスマートさが受け、発売から3年で1万セット以上を売り上げた。
開発のきっかけは2011年の東日本大震災だ。自宅に大きな被害はなかったが、水道も電気もガスもストップ。頼りのコンビニさえ閉まり、物資不足に陥った。「食料が底をついたら、3人の子や妻は…」
震災下での後悔や反省を経て、防災用品の開発に着手した。「防災用品こそ外見が重要」と説き、宮城県内外の印刷会社やデザイナーらの協力で実現にこぎ着けた。社内では「売れ残ったらどうする」との反対が相次いだが、小田原さんは「自腹で買い取る」と押し切った。
商品化された一点一点が被災経験に基づく。非常食の「さつま芋の甘煮」は、老若男女が食べられる軟らかさでアレルギーのリスクも低い。災害時の対応をまとめた冊子を入れたのは、ノウハウをネットに求めても、当時はつながらなかった苦い経験の裏返しだ。
思わぬ反響もあった。採用試験を受ける若者の中には、「ザ・セカンド・エイド」を通じて社名を知った人もいた。社内の評価も上がり、今では海外からの引き合いもある看板商品だ。
小田原さんは「商品が役立つときが来ないことが一番」と話しながら、「商品と一緒に備えの大切さも伝わってほしい」と願う。
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