【D班原稿】ほや&純米酒場 まぼ屋  創作料理で「ホヤ助け」

 

東北学院大3年 佐藤拓満

京都女子大3年 前川葉瑚

宮城学院女子大3年 村山慧子

 アツアツのカツをほお張る。サクッ、ホワッ。口の中に、肉にはない甘味、うま味、苦味が広がった。正体は「海のパイナップル」の異名を持つ「ホヤ」。世界初をうたうホヤ料理専門店の目玉料理「ほやカツレツ」だ。

 仙台市青葉区、JR仙台駅前の「ほや&純米酒場 まぼ屋」は今年7月オープンした。刺し身や酢の物などに加え、「ほやユッケ丼」や「ほやトマトパスタ」、「ほやピザ」など、ホヤ創作メニューも約20品提供する。ホヤ料理に合う純米酒を、東北を中心に25種も揃える。

 運営は、市内で飲食店を4店舗展開する「飛梅」(青葉区)が手掛ける。「たとえわずかでも、捨てられるホヤを助けていきたいんです」。業務本部長の松野水緒さん(37)はお店に込めた思いを語る。

 2011年の東日本大震災による津波で養殖施設はほぼ壊滅。16年、出荷を本格再開したが、現在も出荷の不振は続く。震災前、宮城県産ホヤの約8割を消費していた韓国が、東京電力福島第1原発事故の影響を理由に、13年9月から輸入を禁止。養殖ホヤ約7000トンは行き場を失ったままだ。

 心を痛めた松野さんは、同じ危機感を抱いていた自社の料理人と今年6月、ホヤ専門店の出店を決意。独特な味覚で好き嫌いが分かれるホヤの弱点を克服しようと、開店までの1か月、連日連夜ホヤをたたき、延ばし、刻み、液状にして、100のメニューを考案した。

 結果は吉と出た。38人が入れる店は若年層が目立ち、週末は予約しないと座れない人気ぶりだ。「本当にありがたいです」。松野さんは手応えを感じている。

 ホヤの旬は夏。秋からは冷凍のストックを使い、刺し身などを出し続けるほか、鍋物など季節に合ったメニューも提供する。ホヤ専門店として、「宮城のホヤは一年中うまい」と言わせられるか、未知の領域に挑む。

 「宮城を代表するホヤを、店を長く続けていくことで全国区にしたい」。目標に向かって、世界初の挑戦は続く。


バーのような雰囲気の店で、オリジナル料理に込めた「ホヤ愛」を語る松野さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

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