高進商事 防災セット 世界へ発信 法政大3年 渡邉匠
「防災セットは、いざという時に取り出せなければ意味がない」。仙台市宮城野区にある「高進(こうしん)商事」の社長小田原宗弘さん(48)は言い切る。既存品の多くは中身がかさばって不格好だ。結局、物置の奥にしまわれ、肝心の災害時に使われない。「目指したのはコンパクトでスタイリッシュな防災セットです」
工場機械部品の卸販売を本業としながら2014年7月、防災セット「ザ・セカンド・エイド」を開発した。デザイナーと協力し手掛けた外見は、清潔感ある白地に赤のロゴ。加えて本棚にすっきり収まるサイズにし、生活空間になじむよう設計した。商品名には「救急箱(ファーストエイド)の『次』に必要とされる存在になってほしい」との願いを込めた。
きっかけは東日本大震災。ガスや電気、水道が止まり、コンビニも開いていない。近所の商店からいただく食材で急場をしのいだ。自分以上につらい思いをしている人が多くいることを後に知り、被災地のニーズに即した防災グッズの必要性を実感した。
内容も厳選している。高カロリーだがアレルギーのリスクは低いさつま芋の甘煮、防寒対策として使えるアルミ製ブランケットや災害マニュアル…。震災を経験した被災者の声を13のアイテムに反映した。
中でもイチオシは「ウォータータオル」。手拭いサイズのタオルを150ミリリットルの水と一緒に真空パックした。絞れば飲料水として使用でき、震災時に多かった「汚れた顔を思い切り拭きたい」との要望もかなえる優れものだ。
結果は吉と出た。発売から3年で、ネット販売を中心に1万セット以上売り上げている。最近はギフトとしての引き合いも多い。「全国各地で災害が相次ぐ。何かあった時に使ってほしい」。1人暮らしを始める子どもに親が送るといった動きの広がりに、小田原さんは手応えを感じている。
海外でも使ってもらえる商品にしようと、英語表記もマニュアルに追加した。「現地のメーカーや商社と組んで海外仕様を作ろうかな」。小田原さんは世界で活躍する機をうかがっている。
実際に商品を出して説明する小田原宗弘さん(48)
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