ほや&純米酒場 まぼ屋 創作料理でホヤファン広げる 宮城学院女子大学3年 村山慧子
常識を覆すような店が、JR仙台駅近くに7月オープンした。「ほや&純米酒場 まぼ屋」は、刺身や酢の物で食べるのが常識だったホヤの、新しい食べ方を提案する。メニューは28品。「ほやカツレツ」や「ほやトマトパスタ」など、今までに誰も思いつかなかった料理が並ぶ。ホヤに合う純米酒にもこだわり、東北の地酒を扱っている。
出店を決めた地元飲食チェーン「飛梅」の業務本部長、松野水緒さんは「少しでもホヤを助けたかった」と語る。きっかけは、ホヤの大量廃棄を知ったことだった。2011年の東日本大震災による津波で養殖施設はほぼ壊滅。16年、出荷を本格再開したが、現在も出荷の不振は続く。震災前、宮城県産ホヤの約8割を消費していた韓国が、東京電力福島第1原発事故の影響を理由に、13年9月から輸入を禁止。養殖ホヤ約7000トンは行き場を失ったままだ。
狙ったのは、新たなホヤファンの開拓。今まで苦手だった人でも食べられる料理を模索した。延ばしたり、刻んだり、ピューレ状にしたり、試作と試食を重ねた。味と香りは残しつつ、敬遠する人が多い臭みは消し、食欲をそそる見た目にするために工夫した。例えば「ほやステーキ」は、きれいな焼き目を求めて加熱すると、熱で味わいまでも飛んでしまう難しさがあった。何度か熱の入れ方を変え、ベストの調理法をあみ出した。目玉の「ほやカツレツ」は、ホヤの水分量が多さに悪戦苦闘。サクッという食感に欠かせない衣のつけ方は、もはや企業秘密の領域だ。
開店から1か月あまり。様々な年齢層が来店し、週末は予約なしでは入れないほどの盛況ぶりだ。「本当にありがたいことです」。松野さんは手ごたえを感じている。
旬の夏が終わり、活ホヤがなくなる秋以降が正念場。活ホヤに負けない「新鮮な冷凍ホヤ」が可能な加工会社と手を組み、開店人気が通年になることを目指す。「ほや鍋」などメニューを季節に合わせて替え、客を飽きさせない準備は既にできている。「宮城のホヤは1年中うまい」と言わせるため、未知の戦いに挑む。
自慢のメニューが生まれた経緯を話す松野さん
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