高進商事 防災商品 自助に生かす 上智大2年 栗原海柚
飲料水、携帯トイレ、非常食…。災害時に役立つよりすぐりの13アイテムを、本棚に収まる1つの箱に詰めた。防災セット「ザ・セカンド・エイド」。商品名には救急箱(ファーストエイド)の「次」に頼りにしてほしいとの想いが込められている。防災用品が物置の奥にしまい込まれては意味がない。生活空間に置いても恥ずかしくないよう、白地に赤のロゴが目を引くスタイリッシュな外観だ。
開発したのは、主に工場機械器具の販売を行う「高進(こうしん)商事」(仙台市宮城野区)。本来の事業とは畑違いの防災グッズを手掛けた背景には、2011年の東日本大震災があった。「備えが不十分なまま被災した、自身の反省を生かして作った」と話すのは、商品開発を手掛けた社長の小田原宗弘さん(48)だ。
生まれも育ちも仙台市。震災時、自宅は大きな被害を免れたが、水道、電気、ガスが軒並み止まり、頼みのコンビニも閉まったまま。妻や3人の子どももいる。自宅に備えはなく、物資不足への不安が募るばかりだった。
自らの被災経験を経て、防災商品の開発を決意した。初期投資は300万円。在庫を抱えるリスクもあったが、「売れ残ったら自腹で買い取る」と決意を貫いた。
断水中でも体を拭けるよう、ぬれタオルを。年配から小さい子も食べられる柔らかさで、ノンアレルギーであるさつま芋の甘煮をー。自分や周りの人が当時欲しかったものを各アイテムとして商品化。地域全体がパニックを起こさないため、まずは一人一人がそれなりの備えを持たなくては。「自助」の足掛かりとなるような商品にしたかった。
防災セットは、14年7月の発売後3年間で1万セットを売り上げる看板商品に育った。近年では、大地震に備える全国各地から注文が入っている。小田原さんは、自身が感じた恐怖を振り返り「首都圏となれば、災害時の混乱は計り知れない」と危惧する。「商品だけでなく、僕らの被災経験も一緒に伝われば。減災のために、少しでも震災時の冷静な行動につながってほしい」と願う。
▲「ザ・セカンド・エイド」を手にする小田原さん。
税込9504円で主にネットで販売
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