復興まちづくり 東北学院大2年 佐藤優薫

雪が悲しく降りしきっていた3月のあの日から1年と5か月。夏の強い日差しが照りつける。仙台の街中を歩けば、震災を感じさせない活気にあふれていた。

震災の記憶は忘れ去られてしまうのだろうか。復旧から復興へ向かうなか、次世代へどのように伝承していくか。その観点からの取り組みを取材した。







豊嶋さん(中央)と制作メンバーの田川浩司さん(23)(左)

手前にあるのはリアルふっこうボイスが制作したチラシ

=8月17日午後、仙台市青葉区のせんだいメディアテークにて=





「まちの復興過程を記録する。それは後世の財産になる」。

 ネットラジオ番組「リアルふっこうボイス」を運営する、仙台市の会社員豊嶋純一さん(29)は力のこもった瞳で話す。ふっこうボイスはまちづくりを学ぶ東北大学の学生と豊嶋さん、そして活動拠点でもあるせんだいメディアテークのスタッフによって昨春結成された団体だ。ライブ動画配信サービスUSTREAM(ユーストリーム)を使い、被災地の住民や復興支援者の声を放送している。

 「研究でまちづくりを学んでいたけれど、震災後のまちを目の前にして何もできなかった」。豊嶋さんは無力感にさいなまれた当時を振り返る。未曾有の大震災。前例のない規模でのまちづくりに取り組むこととなった被災地。住民の意見は割れ、一括りにできない。「行政が住民の意見をどのようにまとめ、動いていくのか。その過程を記録することがまちづくりに必要だと感じた」。それが、豊嶋さんらの原点だった。

 マイクを向けるのは、宮城沿岸被災地の住民たち。漁師や市役所の職員、女子高生など、性別や年代、職業が多様になるように心がけている。

 月1回の放送に加え、力を入れているのは復興の記録だ。石巻や気仙沼など宮城沿岸被災地13市町の復興計画を防災、住まい、農漁業などのジャンルに分けて10ページの表にまとめた。被災地の声を文字で保存し、発言の真意をどう捉えるかについても番組独自に考察を加え、住民の思いを「通訳」する試みにも挑んでいる。







「記録をどのように活かしてほしいですか」。私たちの問いかけに、「今回のような災害が再び起こったときに、まちを再生する手がかりになってほしい」。力強い声が返ってきた。

 震災の実相は記録されなければ薄れていく。

震災を体験した私たちの世代は、知らない世代へ伝える役目がある。
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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。