忘れてはいけないこと 東北学院大2年 菊地慧

「本屋が開いていてホッとした」



震災という大きな出来事が起き、余震という不安を抱えて店を訪ねてきたお客さんが口々

にそうつぶやく。



仙台市若林区にある穀町(こくちょう)書店、ここは震災からわずか三日後、いち早く再開

した。



お客さんがどこも開いてなく不安の中ようやく見つけた光。そして安らぎの場。震災前

も日常会話や愚痴など様々なことを四倉栄子さん(87)に話す。それがお客さんに日常とい

うものを震災の時与えたのではないか。



震災の時もいち早く開けたのはお客さんのためだ。それが四倉さんの信条である。



震災当時、本の流通が一か月以上ストップして新刊がなかなか入手することができなか

った。流通が回復すると一か月分のバックナンバーを漫画本から専門雑誌まで取り扱って

いるすべてを一つ一つ注文した。これは大手ですらやらなかったことだ。



お客さんは口々に言う。「こんな小さな本屋にあるなんて」「大手にもないのに」「不思議

な本屋だな」と。10キロ以上離れたからわざわざ買いに来たお客もいたそうだ。それだ

けお客さんのことを思い、時には利益すら度外視する。まさに、人を思う心、やさしさの

塊だ。



震災の時、「絆」、「優しさ」などの言葉が多く使われた。昔は、当たり前のようにしてい

たこと。四倉さんは震災の時に思い出したことを忘れかけているという。みな他人のため

と動いていたやさしさが感じられない、見かけないからかもしれない。



もし忘れていたとしても、「思い出してほしい」。震災の時、学んだ事を。「伝えてほしい」。

次の世代へ。



本は先人の思いを読み取るものである。本を通して学ぶことがたくさんある。「添い寝の

ころから読書」。穀町書店の壁に掲げてある標語である。小さいころから本を読みそれを経

験にしてやさしい大人になってほしいそういう願いが込められている。



四倉さんのやさしさが穀町書店を安らぎの場にしている。私はそう信じている。



          
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河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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