震災から新たに見出す、古き建物の活用法 立命館大学院 油屋祐輝

 「古い建物には、住むこと以上の価値がある」。



 歴史的建造物の保全・再生を呼び掛けている市民団体『まち遺産ネット仙台』代表、西大立目祥子さん(56)は語る。建てられた当時の様子、代々受け継がれてきた想い。古い建物はまちの歴史を伝える資産でもあり、ルーツを伝えるものでもある。



 仙台市青葉区広瀬町の『兵藤飴老舗』。仙台あめ(太白あめ)専門店として唯一残っていたが、今年7月末閉店した。白地の壁に、地面と垂直となるよう等間隔に飾られた木材。店内には、あめを販売していた陳列箱や、品質の高さを物語る何枚もの賞状。1884(明治17)年から続く歴史が感じられる店舗。一方で、あめ作りに使う機械場の傾き、壁に入るヒビ。震災の影響もあり、店舗は8月末には取り壊される予定だ。





(写真1)見学に訪れた市民に元店舗を案内する、『兵藤飴老舗』4代目店主・兵藤嘉夫さん(71)=右





(写真2)陳列箱の上には、立て札や賞状が置かれている





 『兵藤飴老舗』だけではない。東日本大震災後、仙台のまちから古い建物が姿を消しつつある。震災による建物が全壊したからだけではない。大規模店舗の進出、ライフスタイルの変化、後継者問題ー。これまで抱えていた問題に、震災の直接被害が拍車をかけた。家主は修繕して再出発する道ではなく、店をたたみ、解体・撤去することを選ぶようだ。西大立目さんによれば、古い建物が取り壊されるペースは、震災前より10年から20年ほど前倒しされているという。



 住むことだけを考えれば、建物は新しいものほど資産価値が高い。しかし、まちづくりの一環として、古い建物の存在が全国で見直されている。観光客を惹きつける名所、レトロさを売りとしたカフェ。



 仙台市内でも、震災の影響を受けた古い建物を再活用しているものもある。ボランティアらによる、伝統工芸「堤焼」の窯元・佐大商店(青葉区堤町)の登り窯の復旧。若林区南材木町にある、化学薬品商社として以前活用されていた土蔵の復旧と催しの実施。一度役目を終えた建物が、新たな活用法を見出され、各地で再び脚光を浴びている。



 戦時中の空襲によって、戦前から仙台市内に残る建物は個人・公共ともに数が少ない。仙台に今も残る歴史ある建物を、どう活用していくべきか。西大立目さんは、「仙台ではまだ古い建物に価値を見出せていないのではないか。情報発信などを通じて、長い年月を経た建物の保存や再活用を訴えていくことが今後の課題です」と述べた。
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河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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