夕刊掲載① 読書体験を「生きる力」に

東北大2年 佐藤優司

東北学院大2年 菊地慧

東北芸術工科大3年 小泉遥果







 「本を読むことは、生きる力をつけることなんです」。塩川祐一さん(49)は今、そう信じている。仙台市青葉区にある塩川書店五橋店の店主だ。





 【写説】レジで小学生と話す塩川さん。この男の子は県外に引っ越した今も、帰省のたびに塩川さんに会いに来るという



 昨年、東日本大震災からわずか3日後、いち早く店を再開した。近所の主婦に「余震でおびえる子どものために本が欲しい」と言われたからだ。だが、それだけが理由ではない。



 ずっと思ってきたことがある。人生の困難に直面したとき、子ども時代からの読書体験が支えになるのだと。



 「本そのものに値打ちがあるのではない。読書を通じ、さまざまなことを考えたり思ったりするプロセスに価値がある。そうした体験が好奇心や想像力、人を思いやる心を育み、子どもの成長につながるはず」



 震災後、東京に住む見知らぬ小学生の男の子から、1冊の漫画本が送られてきた。当時の塩川書店では入荷できなかった本だ。自分のおこづかいで買ったのだろう。「みんなで読んで」。遠い被災地の子どもたちを思いやってくれる心が、とてもうれしかった。



 震災の緊迫した状況の中、絵本や漫画本を手に笑顔を見せる子どもを目の当たりにし、「本屋としての自分の役割にあらためて気付かされた」という。



 あれから1年半余り。「誰もが感じた『人を思いやる気持ち』が、失われつつあるのでは」と塩川さんは憂える。「心の想像力」が、日常を取り戻すにつれて失われつつあるのではないか。



 塩川さんは、店に来る学生にまで自分の子どものように接している。レジでの会話は欠かさない。震災後の街で、何ができるか。小さな本屋だからこそ、子どもの成長に携わる活動をしたいと思っている。



 「皆だれだって、最初は子どもでしょう。成長とともに、本から得たさまざまな力で、人を思いやれる人間に育ってほしいんです」



 【メモ】震災から約1カ月間、宮城県内の書店には新刊本が届かなかった。その時期に、塩川書店五橋店は市民が他県で手に入れた週刊少年ジャンプの最新号を譲り受けた。「ジャンプ読めます」の貼り紙を見た地域の多くの子どもたちが、次々と回し読みした。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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