発信と伝承という役割 群馬県立女子大3年 早坂美里

私たちは震災を知った。写真で、テレビで、そして目の前で。

この時代に生き、震災を知る私たちにはいったいどんな役割があるのだろう。



 「被災地の生の声を伝えたい」。そう話すのはネットラジオ番組「リアルふっこうボイス」を運営する豊嶋(とよしま)純一さん(29)。

番組は、まちづくりを学ぶ東北大学の学生を中心に制作され、ライブ動画配信サービスUSTREAM(ユーストリーム)を使って発信されている。

 豊嶋さんは、東北大学のOBであり、会社員となった今も仕事の傍らこの活動に携わっている。



未曾有の大震災。甚大な被害を受けた被災地は、前例のないまちづくりに取り組むこととなった。

震災後、現実を目の当たりにした豊嶋さんの心には「何かしなくては」という衝動がわきあがったという。



 「復興まちづくりには住民の声が必要だ。」豊嶋さんはいう。しかし、市民代表のように主張できる立場になければ、個人の意見は埋もれてしまいがちだ。

豊嶋さんは、悩みをかかえながらも声をあげることが難しい被災地の人々にスポットを当てた。



 昨年5月、番組は始まった。「どんなかたちでも海の側じゃないとだめだ。」「漁業と一体の生活は難しいのでは。」一括りにできない住民の声をマイクでひろった。

この住民の声に対し豊嶋さんら番組制作側が意見を出し合う。まちづくりを学ぶ学生ならではの、鋭い意見が飛び出すこともある。視聴者もまちづくりについて学び、考えることができる構成だ。



 豊嶋さんらが取組むのはラジオ発信だけではない。この記録を残すことにも力を入れている。住民の声を文字化し、その復興の歴史や番組独自の意見も加えまとめる作業も同時に行う。

なぜこの「記録する」という作業も必要なのか。私たちのこの問いかけに豊嶋さんは「震災を知らない次世代の人たちの考えるきっかけになってほしいから」と答えた。



 豊嶋さんはまちづくりという目の前の問題を見つめる。その先にある、次世代への伝承という問題も。

「発信することも記録することも私たちの役割だ」

豊嶋さんは信念をこめて、力強くそう言った。







番組を振り返る豊嶋さん(左)と田川さん=せんだいメディアテーク 
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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。