気づき、築く 東北大3年 神田航平

「まちは、時代の積み重ねです。その時代の特色が建物に表れて、まちの景観に個性が出ると思います。でも震災後から、その個性が急に失われてきているように感じます」。

歴史ある建築物の魅力を伝え、保全活動を行っている「まち遺産ネット仙台」の伊藤則子さんは語る。



仙台市青葉区広瀬町にある市内唯一のあめ専門店「兵藤飴(あめ)老舗」も、今年8月末、取り壊される。震災の影響で、建物が半壊。営業を続けることを断念した。

創業明治17年。あめ工房と店、住居が一軒の建物内に詰まっている、今では珍しい、職人の家だ。





【兵藤飴老舗の外観。左、家族の住居。右、店舗兼工房】





【「あめはこうやって伸ばすんだ」と実演する兵藤さん】



4代目店主兵藤嘉夫さんの祖父の代に増築されたという住居部分には、屋根に乗った鳩の彫刻。書院造の居間には、床框に彫られた鳥獣戯画のようなネズミと木槌。

遊び心の表れた、庶民の文化がそこには残っていた。

「あの頃はよく飴が売れました。だから、増築もできたのでしょう」と、嘉夫さんは話す。建物は歴史を語っていた。





【住居部分の居間、床框に彫られた彫刻】





【住居部分の屋根に乗る鳩の彫刻】



「仙台に住んでいても、古い建物の価値にはなかなか気付けない。仙台市では、古い建物の保全活動が成功したことがあまりないんです」。

歯止めのきかない現状に伊藤さんは、悲痛な面持ちで語った。

仙台市青葉区にある荒巻配水所旧管理事務所。鉄筋コンクリート造り、独特の曲線を描く壁面が特徴。国登録有形文化財にも登録されていたが、倒壊の恐れがあるとして、2011年7月、解体された。

震災後、歴史をもつ建物が町並みから次々と消えている。



古い建物を残すためには、お金がかかる。

倒壊の恐れのある建物には、取り壊しの費用を市が全額負担するということも重なり、古い建物の減少にますます拍車がかかっている。

しかし、一度建物を壊してしまえば、二度とその歴史や伝統は取り戻せない。

古い建物に、住むこと以上の価値があることに気づき、まちを築いていく必要があるのかもしれない。
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河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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