被災者と障害者 東北大4年 斎藤瑠奈

最近、被災地では、被災した人々だけでなく、障害者の就労支援が活発になっている。

なぜ、被災者と、震災復興とは直接の結びつきのない障害者の就労支援が、同時期に行われているのだろうか。



この疑問を、仙台市を拠点に、就労訓練を通して精神障害者の自立を支援しているNPO法人「シャロームの会」代表の菊地茂氏に尋ねてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「被災者も障害者も、『弱さ(=ハンディ)』を抱えているからではないでしょうか」

昨年の大震災で、「被災」という名の「ハンディ」を抱えた人々が、社会に大量に生まれたことで、元々「弱さ」を抱えていた障害者にもスポットが当てられるようになったのではないかと、菊地氏は推測する。

自宅を津波で流された人、仕事場を失った人、愛する人に先立たれた人・・・

震災は、それまでの生活を形作っていた数多くの「大切なもの」を、人々から奪い去っていった。こうした被災者たちは、確かに、3.11以降、生きていく上での「ハンディ」を背負わされたと言えるのかもしれない。震災で味わされた「人生の理不尽さ」に、その場から立ち上がる力さえ、失ってしまった人も、いるかもしれない。

 

だが、「シャロームの会」で、健常者と変らぬ様子で、和やかに働く精神障害者の人々の姿をみると、いつか、被災者たちも、またこんなふうに穏やかな日常を送れる日が来るのではないか、そんな気が、私にはして来る。精神障害者たちもまた、かつて心に深い傷を負い、いつしか精神を病んだ。それでも、同じ障害を抱える仲間とともに働くうちに、再び社会に出る勇気を持てるようになっていく。菊地氏はそう、語ってくれた。



 震災で深い悲しみを味わった被災者たちも、新たな人とのつながりを得ることで、少しでも未来に希望が持てるようになることを、私は心から願っている。
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河北新報社 記者と駆けるインターン

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