復興酒場から「ありがとう」 青山学院大学 西村雄介

 「これまでお店を支えてくれた全てのお客様に『ありがとうございました』と伝えたいです」

 JR仙台駅前にある「復興支援酒場」店長代理の福田一也さん(36)は、この1年間の思いを感謝の言葉で話した。



 諸経費を引いた利益全額を岩手、宮城、福島の被災3県に寄付する目的で昨年9月、1年間限定で復興酒場はオープンした。「東北のお客様に恩返しをしたい」というお店の姿勢に多くの人々が共感し、来客数は約2万人。支援金は東京にある銀座店との合計で1200万円に上り、10月下旬に寄付する予定だ。



 被災地の食材をふんだんに使い、約100種類の日本酒のラインナップも全て被災3県の地酒にこだわった。開店当初から話題を呼び、連夜満席の日々が続いた。

 だが、復興酒場の一年は決して平坦なものではなかった。「営業方針が偽善的だ」とネットの掲示板で叩かれた。震災から1年が経過し、客足が遠のくこともあった。



 「苦しい時期もありました。でも元気をくれたのはやはりお客様でした」と、福田さんは振り返る。



 地元の人だけでなく、遠方から訪ねてくるお客さんたちがいた。被災地でのボランティア活動後、疲れた体でのれんをくぐってくれたお客さんたちもいた。



「被災地に元気を」の思いのもと、杯を傾け互いを励まし、通じ合った。

 常連客の一人である会社員 大内裕貴さん(28)は「この酒場の笑顔と志にいつも元気をもらいました。感謝しているのはこちらのほうです」と目頭を熱くした。

お客さんたちに、店のスタッフも元気をもらった。開店当初から勤める大津悠美子さん(19)は「料理を楽しみ、交流するお客様の姿が私たちの支えでした」と話した。



 目標寄付額1500万円には届かなかった。しかし福田さんは前を向いて語った。「たくさんのお客様の支えで一年間お店を続けることが出来ました。ありがとうの気持ちでいっぱいです」



 復興酒場は惜しまれながら先月末に看板を下ろした。共に励まし、作りあげた復興酒場の思い出はスタッフとお客さんの胸の中に残り続ける。



お客さんと談笑する福田さん 仙台駅前 復興支援酒場仙台店にて


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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