映画作りで笑顔 閖上の子供たち 宮城大学大学院1年 玉野井美都子



 「よし、スタート!」。監督の声が校庭に響いた。

カメラに向かって一斉に走り出す子どもたち。9月下旬、東日本大震災で津波被害を受けた名取市の閖上小で自主制作映画「ふしぎな石」の撮影が行われていた。



 地元の「東北国際クリニック」院長で心療内科医の桑山紀彦さん(49)が中心となり、昨年6月から取り組むPTSD(心的外傷後ストレス障害)ケアの一環。子どもたちは映画作りに先立ち、絵を描くことやジオラマを作ることを通して、震災で抱えた心の荷を下ろしてきた。



 「つらい震災体験を心に封じ込めるのではなく、表現活動を通してゆっくり解放していく。それが取り組みの狙いです」。桑山さんと活動を共にしてきた看護師の宗貞研さん(34)は語る。



 「ふしぎな石」のストーリーは、子どもたちが閖上で見つけた5つの石を持ち寄って重ね合わせると、天からのメッセージが聞こえるというもの。映画の肝であるそのメッセージは、台本には記されておらず、子どもたちがカメラの前でアドリブで発する。それはまさに、心に閉じ込めていた自分の内なる声を言葉にするプロセスでもある。



 今年11月に完成する映画は、年始に名取市民文化会館で公開の予定だ。「『良かったよ』でも、『頑張ったね』でもいいんです。見た感想を子どもたちに伝えてもらえれば、それは必ず子どもたちの自信、ケアにつながります。ですから、多くの方に見に来てほしいんです」。宗貞さんは呼び掛ける。

震災のつらい現実と向き合って、子どもたちが演じた映画。

「心のケアは時間がかかる。子どもたちが心を整理し、強く生きていくためには、多くの人の支えが必要です」。宗貞さんは語る。

喝采を浴びて、子どもたちは未来へ歩みだす。
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河北新報社 記者と駆けるインターン

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