遊び場が生んだもの  宇都宮大学3年 佐々木秋



「小さい子でも取れるように、ボールは優しく投げてあげよう」

小学校高学年の女の子が一緒に遊ぶ小さな男の子を気遣い、周りの子ども達に呼びかける。



仙台市若林区七郷の公園。毎週土曜日に開かれる「出張遊び場」では、異なる年齢の子ども達が工夫しながら皆一緒に遊んでいる。

集まった子ども達がまず駆け寄っていく先は、ブッチャーこと岩渕健史さん(32)。

遊び場を提供しているNPO法人「冒険あそび場‐せんだい・みやぎネットワーク」のスタッフだ。



子どもたちの遊び場であった海岸公園冒険広場が津波の被害を受け、新たに七郷地区で「出張遊び場」を開設したのは昨年9月。

生活の復旧を急いでいた親達の負担を減らすことを目的に子ども達を預かった。

しかし、深刻な事態に置かれていたのは子ども達の心も同じだった。

遊び場にいるのに子ども達はお互い無関心で、1人遊びを続けた。

少しでも干渉すると相手に怪我を負わせてしまう子どももいた。

「普通なら子どもは子ども達だけでも自然に仲良くなれます。でも震災直後はそれが出来なかったんです」。



震災から1年半。「出張遊び場」の開催場所は、今では市内6ヶ所にまで広がった。

そこに集う子ども達は、男の子も女の子も小さい子も大きい子も、お互いを思いやりながら一緒に遊んでいる。

「遊び場に通ううちに、子ども達がお互いを認め合うようになりました。今でも喧嘩はしますが震災直後のような喧嘩ではなく、お互いを理解した上でやっています」と、岩渕さんは子ども達の変化を温かく見守る。

幼稚園に通う息子を連れてきていた佐々木和子さん(37)は、「遊び場に来ると、年の差を超えて知らない子ども同士の会話があります。縦のつながりが、他の公園では有り得ないぐらい生まれているようです」と目を細める。



岩渕さんは言う。「今後も遊び場の活動を長く続けたいです。学区の別や仮設に住んでいる、住んでいないの違いを超えて、遊び場に来ることで子ども達につながってほしいんです。そしてその親同士も。遊び場を、子どもはもちろん親も巻き込む場にしたいと考えています」。

訪れた人々をつなぐため、岩渕さんは今日も遊び場の活動を行っている。









岩渕さんのもとには自然と子ども達が集まる


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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