笑顔で駆けた1年 宮城学院女子大学3年石川知絵
「店に来てくれたお客様には感謝の気持ちでいっぱいです」。福田一也さん(36)は、優しそうな笑顔を浮かべながらこの1年を振り返る。
JR仙台駅前にある「復興支援酒場」。仙台と銀座の2店舗あり、仙台店は9月30日、惜しまれつつも限定1年間の営業に幕を閉じる。年内に岩手、宮城、福島の被災3県に等しく贈る 目的でオープンした。来店した客は約2万人。1年間で集まった総額は1200万円超。福田さんは昨年9月のオープン時から携わり、今年6月からは店長代理を務めていた。
開店当初、福田さんはとても悔しい思いをした。ネットの掲示板に「偽善な営業方針だ」と中傷されたのだ。「震災で多くの痛めた心を癒す手助けをしたい」と意気込んでいた矢先。悔しさがこみ上げたが、福田さんは「行動で示すしかない」と、顔無き彼ら彼女らを見返す思いで店を活気付けた。
客が楽しめる場所にしようと、明るい雰囲気づくりを目指した。その結果、多くの常連や全国各地からのボランティアが訪れた。常連の中の一人に、震災で家族を亡くしたという人が来店した。はじめは心を閉ざし一人寂しく飲んでいたが、何度もこの店に通い続けながら徐々に心を開いていき、スタッフなどと会話を交わすまでになった。
予定通り1年での閉店に、「9月で終了するのは早い」「終わってしまうのはもったいない」という声を店内で多く耳にした。うれしい反響に、福田さんは「もっとお客様やスタッフと一緒にいたいです」と話す。
「お店をもっと続けてほしい」。9月に入り、継続の要望が本社の「ドリームリンク」(秋田市)に全国各地から多数寄せられたため、同時に閉店する予定だった銀座店の営業が、来年いっぱいまで延長されることになった。福田さんたちスタッフが、精いっぱいの笑顔で集客、接客した証しだ。
復興を願う約2万人の思いが詰まっている支援の形。それを必要としている多くの被災者の笑顔に繋がり、復興支援酒場仙台店の記憶が語り継がれる。
笑顔でお酒の説明をする福田さん
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