「さわき」は今日もここに



仙台市青葉区川内の東北大川内キャンパス近くにある小さなラーメン店「さわき」。



ボリュームがあって値段が安いと評判で、多くの学生たちを虜にしてきた。



看板メニューは「スタミナラーメン」。



にんにくたっぷりのスープとほうれん草を練りこんだ緑色の麺の味は一度食べたら忘れられない。とにかく強烈だ。卒業後も帰仙の度に繰り返し店を訪れる客も多い。



さわきには、一風変わったメニューが並ぶ。「スタミナラーメン」のほか、ライスの代わりに麺を使った「カレーヌードル」、チャーハンと焼きそばをミックスした「チャーハン麺」など他店ではないような独特なメニューばかり。すべて、客の声に応えるかたちで生まれ、今年で創業28年になる店の歴史とともに数を増やしてきた。

  

東日本大震災時、市内全域でライフラインが途絶える中、幸運にもさわきは断水しなかった。主人は、

給水所まで水をもらいにいく近隣住民の姿を見て、店の水道を無料で提供した。プロパンガスも正常に使うことができた。



震災からわずか2日後の3月13日、さわきは営業を再開した。この時期、再開できた飲食店は少なかった。



「お店を開けてほしいって常連さんに頼まれたから」と、主人は当時を振り返る。



 品不足で値段が高騰し、野菜などの材料調達が楽ではなかった。それでも、客のためにと必死に動き回った。卸業者、製麺所のあちこちに連絡を取って麺を調達。緑色ではなく黄色い麺で対応した。さわきの代名詞だった緑色麺が黄色に代わったことは、客の間でも“伝説”となった。

赤字営業を覚悟した主人は、通常よりも値段を下げて客にラーメンを振舞った。



「みんな大変な時だったし。(店を開けたら)どんどん来ちゃって、閉められなくなっちゃったんだよね」



あの時から2年が経った。



年中無休、今日もさわきの店内は大勢の客でにぎわっている。



「10人中10人が好む味でなくてもいいんだよ。また食べに来てくれる人が増えたらいいよね」



熱い思いを語るでもなく、主人は何事もなかったかのように過去を振り返り、今を語る。





【カレーヌードルにも緑色の麺を使う】



(高橋萌絵@山形大)


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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