笑顔と元気を
「はじめはこちらが地域のみなさんや子供たちを“元気づけてやろう”と思っていました。でも、それは思い上がりだったんです」。そう振り返るのは、仙台市八木山動物公園の園長、遠藤源一郎さん(60)。
仙台市太白区にある八木山動物公園は、仙台駅からバスで25分ほど山を登った先にある宮城県唯一の動物園。150種以上、500匹以上の動物をじっくりと観察することができる。
二年前の東日本大震災の際、大きな揺れに驚いたのは人間だけではない。サルたちはしきりに鳴き、キリンや馬は檻の中で走り回る。ゾウは怯えて建物の中に入ろうとしなかった。
動物園も地震の被害を受けてサル山が崩れ、カバ館のガラスが割れるなど建物の損害は痛々しいほどだったが、それでも、「八木山は恵まれていた。損壊はたいしたことありませんでした」。と遠藤さんは冷静に捉えていた。「翌日から閉園しなければなりませんでしたが、できるだけ早くオープンしたいと思っていました」。断水や停電が続き、物流も止まり燃料や餌の確保が望めず、動物の健康を維持するのが厳しい状態だった。中にはストレスからか体調を崩す動物もいた。
そんな中、日本動物園水族館協会の協力で八木山動物公園に全国の動物園や水族館から動物たちの餌をはじめとするたくさんの支援物資が送られた。「餌の袋にメッセージが書いてあったりしました。励まされましたね。必ず、必ず再開させようと決意しました」
震災から数日が経つと、動物園には動物たちの安否を気遣う声、動物園の再開を期待する声が届きだした。「はやく再開してほしい」「ゾウのトシコは元気ですか?」。43日の休園期間を経て、2011年4月23日、再開園を果たした。「みなさんのおかげでオープンすることができたんです。心配してくれた人たちに、動物たちの元気な姿を早く見せたかった。応援してくれた方々への感謝を伝えるにはできるだけ早く開園することが一番だと思いました」。オープン当初、復旧が間に合わなかったサル山の上には素っ気ない土管が置かれているだけだった。それでも、訪れたお客さんの顔には笑顔があふれた。震災前と変わらず、元気に走り回る動物たちの姿を見たお客さんから、感謝の言葉をかけられた。「動物たちを守ってくれてありがとう」。「こちらが勇気づけられましたね。オープンしてよかったと思いました」感慨深げに遠藤さんは振り返る。
震災後は市内の小学生を動物園に招待したり、学校にウサギやモルモットを連れて行き、子供たちに動物たちとのふれあいの場を作ったりしてきた。「動物園として何かできることはないだろうか、という思いでやれることは全てやってきたつもりです。しかし、まだ復興はこれから」。今年で退任を迎える遠藤さん。これからの動物園について、「笑顔と元気を与える場所であってほしい。たくさんの人に来てもらえたら」。高野さんは津波の押し寄せた太平洋を見据えながら、そうぽつりと呟いた。
(馬場翔子@東北大)
仙台市太白区にある八木山動物公園は、仙台駅からバスで25分ほど山を登った先にある宮城県唯一の動物園。150種以上、500匹以上の動物をじっくりと観察することができる。
二年前の東日本大震災の際、大きな揺れに驚いたのは人間だけではない。サルたちはしきりに鳴き、キリンや馬は檻の中で走り回る。ゾウは怯えて建物の中に入ろうとしなかった。
動物園も地震の被害を受けてサル山が崩れ、カバ館のガラスが割れるなど建物の損害は痛々しいほどだったが、それでも、「八木山は恵まれていた。損壊はたいしたことありませんでした」。と遠藤さんは冷静に捉えていた。「翌日から閉園しなければなりませんでしたが、できるだけ早くオープンしたいと思っていました」。断水や停電が続き、物流も止まり燃料や餌の確保が望めず、動物の健康を維持するのが厳しい状態だった。中にはストレスからか体調を崩す動物もいた。
そんな中、日本動物園水族館協会の協力で八木山動物公園に全国の動物園や水族館から動物たちの餌をはじめとするたくさんの支援物資が送られた。「餌の袋にメッセージが書いてあったりしました。励まされましたね。必ず、必ず再開させようと決意しました」
震災から数日が経つと、動物園には動物たちの安否を気遣う声、動物園の再開を期待する声が届きだした。「はやく再開してほしい」「ゾウのトシコは元気ですか?」。43日の休園期間を経て、2011年4月23日、再開園を果たした。「みなさんのおかげでオープンすることができたんです。心配してくれた人たちに、動物たちの元気な姿を早く見せたかった。応援してくれた方々への感謝を伝えるにはできるだけ早く開園することが一番だと思いました」。オープン当初、復旧が間に合わなかったサル山の上には素っ気ない土管が置かれているだけだった。それでも、訪れたお客さんの顔には笑顔があふれた。震災前と変わらず、元気に走り回る動物たちの姿を見たお客さんから、感謝の言葉をかけられた。「動物たちを守ってくれてありがとう」。「こちらが勇気づけられましたね。オープンしてよかったと思いました」感慨深げに遠藤さんは振り返る。
震災後は市内の小学生を動物園に招待したり、学校にウサギやモルモットを連れて行き、子供たちに動物たちとのふれあいの場を作ったりしてきた。「動物園として何かできることはないだろうか、という思いでやれることは全てやってきたつもりです。しかし、まだ復興はこれから」。今年で退任を迎える遠藤さん。これからの動物園について、「笑顔と元気を与える場所であってほしい。たくさんの人に来てもらえたら」。高野さんは津波の押し寄せた太平洋を見据えながら、そうぽつりと呟いた。
(馬場翔子@東北大)
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