「春」を支える 仙台・受験生を見守るホテルスタッフ

2月末、学都仙台には大学受験生がたくさん集まります。ホテルは決戦前夜の受験生を受け入れ、大願成就をバックアップします。私たちも数年前、お世話になりました。当時伝えられなかった感謝を胸に、今年も受験生を支えた市内のホテルを訪ねました。





ホテルモントレ仙台では、受験会場までの交通手段や食事などについて記したパンフレットを受験生に配っている=2月末、仙台市青葉区中央





部屋に電気スタンドや加湿器を貸し出すのは、もはやスタンダード。問い合せた仙台市内の主なホテル30軒中26軒が、こうしたサービスを提供していました。



青葉区一番町の「スマイルホテル仙台国分町」では今冬、ちょっとした“事件”がありました。国公立大の二次試験初日の朝、仙台は大雪で道路はどこも渋滞。そのため予約していたタクシーが来なかったのです。スタッフが機転を利かせて流しの1台を止め、学生4人を相乗りさせて試験に間に合わせました。



青葉区通町の「ホテルグリーンシティ」のフロント鈴木まこさん(24)は昨冬、「受験票をホテルに忘れた」との電話を受けました。とっさに口頭で受験番号を伝え、事なきを得ました。「学生さんにとって受験は一大事。責任を持って支えたい」

と話します。



上司の営業本部副本部長、大熊利孝さん(58)は「本当の気遣いはマニュアルにはないんです」。人生の分岐点に立つ受験生への対応は、プロの真価が問われる場面です。



宮城野区榴ヶ岡の「丘のホテル」は来期以降、レストランを自習室として開放することを検討しています。創業300年を越える老舗の新たな試み。高校生の息子がいる8代目社長の梅原敏さん(42)は「試験日はわが子を送り出すような気持ち。できるだけのことはしてあげたい」と話します。これまでも近所の学業の神「榴岡天満宮」のお守りを渡し、励ましてきました。



3月。青葉区中央の「ホテルモントレ仙台」には一足早い春の知らせが舞い込みます。



「合格後、入学準備で訪れる際に、またご利用くださる学生さんもいます」。副支配人の遠藤剛志さん(46)は利用者からの吉報が何よりの喜びです。「フロントで『受かりました!』と報告してくれることもあるんです」。冬を乗り越えたことを、一緒に喜ぶ瞬間です。



夢に挑む若者の背中を優しく見守る大人は、保護者や先生だけではありません。杜の都のキャンパスに、桜が咲く日はもう間近。「春来る」に浮かれる前に、感謝を噛みしめたいものです。





執筆者:

大沼 遼(東北大3年)

石川 奈津美(慶應義塾大卒)

開沼 達也(東北学院大卒)

高橋 萌絵(山形大2年)


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。