夕刊掲載② 思いあふれた酒場

東北大2年      大高志織

宮城学院女子大3年  石川知絵

石巻専修大3年    斎藤大輝

青山学院大3年    西村雄介



 「生きてて良かった」

 津波で実家を失った学生のメッセージだ。JR仙台駅前の『復興支援酒場』仙台店。40人ほどが入れる店内の壁一面に、客が思いを記した短冊が貼られていた。

 「皆さま、いろいろな思いを書き残していきました」。店長代理の福田一也さん(36)は、感慨深げにこの1年を振り返る。

 売り上げから諸経費を引いた利益全額を岩手、宮城、福島の被災3県に贈る目的で昨年9月、1年間限定で開店した。多くの人々がその趣旨に共感し、約2万人がのれんをくぐった。ことし1月開店の銀座店と合わせ寄付総額は1200万円を超えた。

 「自分たちが元気で明るくなければ、お客さまを笑顔にすることはできない」。十数人のスタッフ一同、笑顔を絶やさず客が楽しめる空間づくりに努めた。

 「この1杯のお酒が被災地支援につながると思うと、よりおいしく感じます」。仕事帰りの女性客3人は口をそろえた。被災地での活動後に立ち寄るボランティアたちもいた。震災で家族を亡くし心を閉ざしていたある被災者は、店に通い続けることで徐々に心を開いていった。

 感動や喜びばかりではなかった。偽善的な営業方針だとネットの掲示板で中傷された。震災後1年あたりからは客足が落ち始め、「震災の風化」を感じさせた。

 それでも、店は1年間走り続けた。「復興支援」の看板を背負って。共感してくれた客の笑顔と、それぞれの思いが込められた壁のメッセージが後押しとなった。

 「お客さまには感謝の気持ちでいっぱいです」と福田さんは話す。常連客の会社員大内裕貴さん(28)は「スタッフの笑顔と店の志にいつも元気をもらっていました。感謝するのはこちらのほうです」と語った。

 「がんばっぺ東北!」。熱いエールが、壁からこだましてきそうだ。店は予定通り9月末で、のれんを下ろした。被災地支援へのそれぞれの思いを残して。





【写真】復興酒場を訪れた客と談笑する福田さん
--------

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。