リルーツに学ぶ被災農地のいまとこれから

インターン2週目に突入した8日目、仙台市若林区で活動するボランティア団体ReRoots(リルーツ)の農地再生の取り組みに参加しました。



案内された現場は、若林区荒浜地区。本来ならば午前中から畑の土おこしを体験する予定でしたが、積雪のために予定を変更して、リルーツの活動の歩みや狙いをじっくり教えてもらいました。







説明は、リルーツ代表の広瀬剛史さん。震災一ヶ月後の2011年4月から、若林区の復興を農業の再生、コミュニティーの再構築を軸に後押ししています。



リルーツの運営は、主に学生スタッフが担っています。復興支援に自ら携わりながら団体運営の手法なども学べるとあって、スタッフとして加わる学生は増え続けています。



僕たちをサポートしてくれた学生スタッフの一人東北大学1年生の稲田さんは、昨春の入学後、リルーツの志に共感。毎週末の休みになると仙台市中心部の下宿から自転車を飛ばし、復興の力になってきました。



「活動を続けてきたことで知名度が上がったということもありますが、他のボランティア団体が次々と撤退していることも、ここに人が集まる原因の一つでしょう」。広瀬さんは少し表情を曇らせました。



若林区の田園地帯に学生らが根を下ろして間もなく2年。地域の農家に慕われ、学生スタッフもボランティア参加も増え続けている背景はどこにあるのか─。







広瀬さんは「頼まれた仕事を場当たり的にこなすのではなく、当事者目線を大切にすること。地元の人が何を必要としているかを常に考えながら支援すること。その積み重ねです」。言葉には、自信と手応えが溢れていました。



リルーツは、被災した農家が自分たちの生産物を使って商品を開発し、自ら販売まで手がけて、外からも多くの人が訪れる活気あふれる農村を作り上げることを目指しています。描く地域の未来図は、日本の農村が抱える諸課題への一つの答えなのだと感じました。



広瀬さんの熱弁もあってか、雪融けが進んだ午後、海沿いの畑で土おこしを体験しました。一度重機で掘り起こしたものの、いまだ小さな瓦礫が大量に埋まっていて、耕作を再開するには、一つひとつ取り除く必要があるそうです。







雪がちらつき、強い北風が吹きつける中、シャベルの頭一つ分の深さまで土を掘り、埋まっている瓦礫や石、ガラス片などを手作業で取り除きます。



かつては家が近くにあった場所。コンクリート片や石だけでなく、食器のかけら乾電池、ボタンや鈴などが出てきました。周りを見渡しても、いまは家の基礎しか残っていない物悲しい場所ですが、かつてはここに家があり、多くの人が暮らしていたのだということを、物言わず伝えているようでした。



出てきた瓦礫は分別し、土嚢に入れます。集めた石やレンガのかけらは一つ一つは小さいものなのに、袋はあっという間にいっぱいになりました。







リルーツが再生を後押しした農地では、既に耕作が再開している場所もあります。広瀬さんは、そこで農家が作物を魂を込めて作り上げる姿に触れ、「心底カッコいいと思った」と話します。



「たとえば仙台特産の曲がりねぎを作る時にも、ちょっとした工夫があるんですよ。それぞれ企業秘密ですから言えませんけどね」







農家が農業のプロとして輝きを取り戻すシーンに立ち会うことは、リルーツの活動を支える何よりの醍醐味です。



徹底した当事者目線で被災地の現実をしっかり見つめ、同時に先を絶えず予測しながら課題に向き合っていく─。



広瀬さん率いるリルーツの姿勢を手本に、これからもインターンに臨みたいと思います。

(大沼 遼@東北大学)
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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。