思いの伝え方

「被災地のいまに向き合う21日間」のインターンの3日目。

今日は、取材の基礎や被災地と向き合うための心構えをみっちりと考え、学びました。



まずは「他己紹介」のワーク。

自分の隣りの人がどんな人なのかを短時間で聞き、他の人に紹介します。







どう質問したら、その人のことを知ることができるのか─。

何を語れば、その人のことが分かりやすく伝わるのか─。

この活動の中には、取材と記事執筆のエッセンスが詰まっています。



互いに手さぐりでしたが、質問を絞り出し、投げかけ合いました。



デスクの指摘で一番印象に残っているのは、自分の「評価」を伝えるのではなく、

聞き出した「事実」を伝えるのが大切だということ。



例えば、「頑張っている人」という自分の想いを字面通りに書いても、読んでいる人には伝わりません。



具体的にどんな頑張りを積み重ねたのかというエピソード、つまり「事実」を伝えたほうが読んでいる人には伝わります。







「評価は自分でなく、読者がするもの」



自分が伝えたいことを伝えるために、聞いたことの中のどの事実に光を当てるか─。

自分の想いを直接は書かないけれど、それを伝えるための「事実」を選び記すことが、「記者」の役割なのだと再認識しました。







午後は、仙台市泉区在住の青野哲大(てつひろ)さんの講演を聞きました。最後の質疑では午前中の学びを活かして、質問をぶつけました。







青野さんは家族と共に、震災前に住んでいた気仙沼市を離れ、現在は民間の借り上げ住宅、いわゆる「見なし仮設」で生活しています。

見なし仮設は、見た目的には普通のアパートやマンションであるため、プレハブの仮設住宅団地と比べると、外部からの支援の手が届きにくいという問題があります。



青野さんは、一家の生活を紹介した4コマ漫画をブログに掲載することで、見なし仮設の問題点を伝えています。



「見なし仮設の住民は、自分から『見なし仮設に住んでいます』とは言いずらいんです。隣りの住民は、普通に家賃を払って暮している人ですから、後ろめたさがあるんです」



外から現状が見えなければ、支援は届きません。自分から声を上げられず、孤立してしまう被災者も多いそうです。



青野さんは、こうした現状について、「自分の中でこうした方が良いと思うことはありますが、ブログの中で、解決する方法を発信することはありません。今の現状を伝えていきたい」と話します。



「みなし仮設のことが伝わり、多くの人が理解することで、被災者が自分のことを表明でき、周りの人がそれを受け入れるような社会になればいいと思います」



これから被災地に向き合う僕たちは、複雑で正解がないような問題と多く出会うと思います。その時、逃げずに、自分なりの答えを考え抜きたいです。



取材をする時には、「自分はこう思う」という意志がなければ、人に伝えるための記事を書くことはできないのだろうと思いました。

その悩み抜いた答えを伝えるために取材し、事実に光を当てながら伝えたいと思います。



青野さんの活動の中に、僕たちの「伝える」活動にも通じるヒントがあると感じました。



(下澤大祐@東北大)
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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。