寒さの中で

こんにちは。インターン生の武長慧介@東北大です。



インターンシップ4日目の今日は、津波被災地に足を運びました。



訪れたのは、名取市閖上。かつて約7000人が暮らしていた太平洋沿いの集落です。







名取市商工会議所の高野俊伸さんに案内してもらいました。高野さんは震災前まで閖上の地で、菓子店を営んでいました。



「うちは、そこ」







高野さんが指差した先には、建物はありませんでした。見えたのは基礎だけ。自宅兼店舗は、津波で壊滅的な被害を受け、すでに取り壊されていました。



かつて街並みがあったところで感じた風は、ことさら身を切る冷たさでした。津波で家や商店がすっかり失われ、防風林も流されてしまい、閖上の街を吹き抜ける風を遮るものは、今はもうないのです。







高野さんの話を一生懸命聞きながら、写真を撮ったり、メモ帳にペンを走らせたりするのですが、手袋なしでは手がかじかみ、思うように動きません。



高野さんの話によると、震災があった2011年3月11日は雪が降っていました。その夜、地元の閖上小学校には800人を超える地域の人々が避難し、寒さに凍えながら一夜を過ごしました。







地元の消防団員でもある高野さんは、学校の消火栓のホースを使って津波に流された人をすくい上げたり、人命救助に欠かせないAEDを取るために首まで水に浸かったり。「目の前の人を救いたい一心でした。寒さも感じないほど無我夢中でした」と振り返りました。



現場に立つことの重みと、体験した人の話を聞く大切さ─。

僕は今日、この二つを感じました。



防寒具を着込み、ただ話を聞くだけの僕には、当時の高野さんらが体験した本当の過酷さは分からないかもしれません。それでも、3.11の雪を彷彿とさせる寒空の下、命の危険も顧みず人命救助に当たった高野さんの肉声に触れて、閖上が直面した困難の一端を少しは感じ取れたような気がしました。



今日の学びを、これからの取材につなげたいと思います。
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河北新報社 記者と駆けるインターン

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