シャッターを切る思い

インターンシップ5日目のブログは、氏家麻弥@東北学院大学3年が担当します。よろしくお願いします。



今日の活動のメインは、「写真」でした。

河北新報のプロカメラマン門田勲デスクから写真を撮る上での「技」と「心」を学びました。







門田デスクは震災後、被災地を何度も訪れ、「被災地のいま」にレンズを向け続けてきました。



講習では、門田デスクを含む河北新報のカメラマンが撮影した、この2年近くの被災地の記録を数多くスクリーンに映し出して、一つ一つに解説を加えてくれました。







津波の怖さ、失うことのつらさ、そして人のたくましさ・・・。震災の実相を丹念に捉えていました。



写真からは津波の恐ろしさと同時に、「写真を目にする多くの読者に被災地の窮状を伝えたい」というプロの思いが伝わってきました。







カメラを構えるのさえはばかられる被災地で、どんな姿勢で撮影に臨めばいいのか─。門田デスクは心構えについても多くの学びを与えてくれました。



私の心に響いた言葉を一つ挙げるなら「相手を敬う」こと。取材対象に敬意を払い、全身全霊で向き合って、相手との信頼を築くことが大切だと知りました。そのために私も取材者としての「心」を磨いていきたいと思いました。



学んだあとは実践です。門田デスクに与えられた課題は「春」。春にフォーカスして写真を撮ることを求められました。8名のインターン生がカメラを手に、仙台の街に「春」を探し求めて散りました。







私は、河北新報社近くの仙台朝市に行きました。撮ったのは、春野菜が並び始めた八百屋で働く女性や、「球春」間近の楽天イーグルス関連商品を売る店主などです。撮影後は各自が自信作3枚を選び、門田デスクに講評してもらいました。







春を伝えるために、予備校の「春期講習」や、街角の「春の交通安全運動」といった文字を入れる人が多く、門田デスクからはむしろ、人物の表情や色調、構図などを工夫することで春を伝えるようにとアドバイスされました。



講演の最後、門田デスクは1枚の写真を見せてくれました。震災発生の翌朝、ヘリで被災地上空を飛んだ門田デスクが撮った1枚です。



そこには、津波で大きな被害を受けた自宅のベランダから、赤いタオルを手に、カメラに向かって助けを求める女性の姿が写っていました。この女性はその後、自分が写った写真を河北新報の写真集に見つけ、撮影したカメラマン宛に手紙を送ってきたそうです。



女性は、目の前で夫が津波に流される地獄を体験し、同居の義父母も失ったそうです。それでも、ヘリにSOSを訴える自分の姿から、当時自分が懸命に生きようとしていたことを再確認し、それがいまを生きるエネルギー、再起の人生を歩む原点になっていると、手紙に記したそうです。

 

震災翌日、目の前の被災者を救えない自分に怒りやいらだちを感じながらシャッターを切り続けた門田デスク。それでもいま、レンズ越しに出会った被災女性との交流を重ねながら、被災地報道のあるべき姿を模索しています。



被災者を勇気付け、そして撮影者をも鼓舞する写真の底力に初めて触れました。



これから私たちは取材で被災地を訪れます。期待よりも不安が大きいですが、門田デスクから学んだ写真を撮る心構え胸にシャッターを切りたいと思います。
--------

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。