世紀を超えた「づんだ」 村上屋餅店  C班

笹山大志(立命館大2年)

ボハーチ・ダービッド(東北大博士課程2年)

遠藤有紗(山形大1年)

佐藤知佳(東北学院大3年)






若草色の生地に「づんだ餅」と白抜きされたのれんをくぐると、ショーケースに餅や大福、まんじゅうが整然と並ぶ。仙台市青葉区北目町にある村上屋餅店は、今では仙台名物となった「ずんだ餅」を初めて商品化した店として知られる。



表記は「ずんだ」が一般的だが、ここでは「づんだ」。「豆を打って作る豆打(づだ)」がなまったという由来を大切にしている。



1877年の創業以来、手作りを売りにしてきた。これも店主、村上康雄さん(59)のこだわりだ。





『だれにも真似できない』と伝統の味に自信を持つ村上康雄さん=仙台市青葉区北目町の村上屋餅店



仕込みは毎朝早くから村上さんが一人で行っている。つきたての餅を同じ重さになるように手でちぎる。づんだとなる枝豆の薄皮もひとつひとつむいて、すり潰す。絶妙な甘さの中に、しっかりと豆の味が生きている。



「こんな時こそ甘いものが食べたい」。東日本大震災の2日後、食料や物資が入ってこない状況で、再開した店の前には長蛇の列ができた。甘さに安らぎを求めた被災者の期待に応えるべく、休むことなく在庫の限り餅を練った。「材料があったから。やらない理由はなかった」



栄養価の高い餅を被災地石巻までわざわざ届けに行く客もいた。2年5カ月たった今でも、「あのときはありがとう」と店を訪れる客が後を絶たない。



手作りだからこそ生み出せる味。常連客の女性(76)は「あたしのひいおばあちゃんのころから通っているのよ」と誇らしげに話した。一緒に来ていた娘は「村上さんのづんだは特別。他の店のずんだは“づんだ”じゃないよね」とうなずきを返した。



本物の味を求めて全国から足を運ぶ人が多く、客足は10分と途切れることはない。伝統を受け継ぐ変わらぬ味は世代や距離を超え、愛される。



かつては伊達家御用達の和菓子屋だった。137年の歴史を紡いできた村上屋餅店だが、村上さんの娘二人は、それぞれ家業とは別の道を歩んでいる。だからといって、代々受け継いできた技を他人に教ええるつもりはない。「俺が死んだら、終わりだよ。だから生きてるうちに食べに来て」


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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