信頼が新たな価値を  東北学院大・石川椋



仙台市内を通る国道4号線から荒町商店街を抜け、すぐのところにコンクリートが打ちっぱなしの建物がある。仙台箪笥を作り続ける老舗、門間箪笥店だ。隣接する工房は木造で築50年。そこで職人が木材を一から加工し、鏡のように輝く仙台箪笥を作っている。



「作り手と売り手の信頼関係が重要だ」。力強く語るのは、創業141年の同社7代目、専務取締役の門間一泰さん(37)。スーツ姿に、ipadと黒革の手帳がよく似合う。たんすに囲まれて育ち、大学卒業後、リクルートに入社。マーケティング部門で活躍。2年前、在職10年という節目と東日本大震災をきっかけに退職し、家業を継いだ。





将来を見据える門間一泰さん=仙台市若林区の門間箪笥店・伝承館



 門間さんは職人ではない。社長である母とともに会社を経営し、たんすの販売を専門としている。製造の工程は、すべて職人に任せている。

「獲得したい顧客は30代後半から40代のファッション感度の高い人」だと言う。マーケットで求められているものを常に考えている。新しいデザインやたんす以外のものづくりに挑戦する。その一環が新ブランド「monmaya+(プラス)」。デザイナーと共同でローテーブルなど新たな使い方を提唱。顧客の裾野を広げている。



現在、職人は9名。そのうち20代が2名、30代が4名だ。「やる気があれば誰でも受け入れたい」と語る。今後は職人の数を増やしていく予定。

毎朝、裏口から工房を通り、職人一人一人にあいさつを欠かさない。若手の職人とは、週一回のミーティングと月一回飲み会の場を設け、経営方針を伝える。日々のコミュニケーションが信頼関係を深める。



塗り職人の大橋翔太さん(24)は、「伝統は大切だが、生活様式が変われば、それに合ったものを作らなければならない」と話す。経営者の思いを職人が受け止めているあかしだ。



「私は経営者として職人が作った商品を売るインフラを整えたい」と門間さん。自らの役割を強調する。来年に青葉通りに新店舗を出店予定。再来年には東京に将来的には海外への展開も視野に入れている。


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。