被災から3年 まるぶんの挑戦    東北大3年 木部翔

                  


 


一口大の揚げかまぼこをほおばると、じわっと広がる枝豆の香り。


塩釜市の揚げかまぼこメーカー、マルブン食品の「和つまみ秘伝豆」だ。


「秘伝豆」は角田市産の枝豆。


春夏の季節限定商品として、3月から販売している。


 


「和つまみ」シリーズは全4種。


社長の佐藤文行さん(54)は「酒の摘みに持ってこい。若い人にこそすすめたい一品だ」とアピールする。


1969年の創業以来、化学調味料を使わない製法を守り続ける。


卵も使用しないのでアレルギーの心配がなく、学校給食の需要もある。


「こだわり抜いたかまぼこの価値を、もっと知ってほしい」との思いで、従業員87人とともに製造に励む。


 



「和つまみ」シリーズを手に、微笑む佐藤さん=塩釜市「マルブン」本社


 


2011年3月の東日本大震災では、2つの工場うち1つが全壊。


3カ月後に再開したが、東京電力福島第一原発事故による風評被害が影を落とす。


売上は震災前に比べて30%に落ち込んだ。


「遠くの取引先ほど、情報が正確に伝わっていない」。


佐藤さんはくやしさをにじませる。


それでも応援してくれる人の存在は心強かった。


これまでに約300人から激励の手紙や物資が届いている。


「商品が戻ってうれしい」との文面に、「涙が出そうになった」と佐藤さん。


商品への想いが消費者に届いていると実感した。


励ましの言葉は、従業員にとっても再起の原動力になった。


 


将来は工場敷地内に直売所を開く。


製造現場の見学や揚げたてかまぼこの試食を通じて、消費者に安全性をアピールするのが狙いだ。


佐藤さんは「消費者と直接向き合い、『安心して食べられる商品だ』と伝えたい」と語る。


これからの課題は、変化する消費者のニーズに対応していくことだ。


かまぼこはおでんや煮物など冬場の消費が多い。


季節や和食にこだわらない食べ方を提案したいと考えている。


「和つまみ」シリーズは、そんなチャレンジ精神の現れだ。


「食卓の変化についていきつつ、食材の良さを伝えたい」。


伝統を守り、変わる時代に挑む。


 


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。