七夕まつりの立役者      東北学院大3年 武藤恵里花

七夕作りは冬を迎えた11月から始まる。


竹でできたくす玉の骨組みに出来上がった花紙を取り付ける。


友禅染で描かれた模様の和紙。


それを1枚1枚重ね合わせ吹き流しは完成する。


七夕を作り続けて30年以上のベテラン山村蘭子さん(82)を中心に制作は進む。


社員をまとめるのは鳴海屋紙商事6代目の鳴海幸一郎さん(46)。


 


 



七つ飾りを説明する鳴海幸一郎さん(46)  


 


鳴海屋紙商事は若林区卸町に本社をおく創業130年の老舗の紙卸店だ。


高度経済成長期に県外からくる多くの進出企業に七夕作りを教えていたら、いつの間にか商売の1つとなった。


商店街に飾られる七夕2500本のうち1500本を鳴海屋が制作。


地元企業の信頼も厚い。


紙の断裁以外の工程はすべてが手作業で、各地から制作依頼が舞い込む。


 


震災直後の七夕制作は、通常6カ月の期間を2か月で仕上げた。


震災の影響で本社が壊れ、断裁機3台中2台が故障。


生き残った機械でなんとか七夕まつりにこぎつける。


商店街の協力や七夕制作の依頼が「鳴海屋だけでも絶対作る」という思いを後押しした。


5月の青葉まつりの中止で、七夕まつりの開催は希望の象徴のようだった。


 


 


その年仙台市内189校の小中学生が参加した「星に願いをプロジェクト」が発足。


初年度は七夕飾りで使われる鶴8万羽を折った。


鶴の飾りを作る際に使用するストロー計9万4千本の裁断は鳴海さん自らが行う。


完成した七夕は仙台の百貨店前に飾られ、多くの観光客の目に留まり、名所として注目を集めた。


今後は子供たちに鶴を、父兄には吹き流しを制作してもらう予定だ。


鳴海さんは「今までたくさんの七夕を作ってきたが、こんなに素晴らしい七夕は見たことがない」と話し「各学校で作った七夕で商店街を埋め尽くすのが私の夢」と未来の七夕祭りに思いをはせた。


 


 


そうした夢を現実のものにしていこうとする使命感。


中学生のころから七夕制作に携わってきた鳴海さんの思いもひとしおだ。


「七夕の魅力を知ってもらうには実際に作るしかない、とにかく体験してほしい」体験の場を提供すべく出前授業や講演会にも力を入れる。


七夕に対する熱い思いを多くの人に伝えたい。


鳴海さんは今日も黒子として動き続ける。


 


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。