進化し繋ぐ伝統  東北学院大2年 村山翔

「漆塗りを廃れさせず、後世に残したい」


1860年創業の長谷部漆工(仙台市青葉区)の12代目長谷部嘉勝さん(62)は語る。


漆塗りは、漆を幾重にも塗り、素材の美しさを一層際立たせる技法だ。日本独自の技術で、職人によって表現の仕方も違う。伝統工芸品である仙台箪笥や仙台堆朱に用いられている。


長谷部さんの生まれは仙台市で、父忠さん(99)の仕事姿を見て育った。職人数の減少から技術が途絶えてしまうと感じ、大学卒業後漆塗り職人としての道を歩み始めた。「30数年職人をやってきたが、手際の良さや塗った数も、まだ先代の域には達していない。体が動く限りやっていきたい」と語る。


 2011年3月の東日本大震災以前、長谷部漆工が請け負う仙台箪笥の依頼は、製作と修繕が半々の数であった。震災をきっかけに状況は変わった。津波に飲まれたものや、被災はしていないが古くなった箪笥の修繕依頼が9割を占めた。中には、処分したいと言う人も出てきた。


若者が漆塗りに興味を持つようにとの願いを込め、プロジェクトを2012年に設立した。現代の生活様式に合わせて、古くなった大型の仙台箪笥を小型化したり、違うモノに作り変えたりすることで、長く使い続けてもらう。


プロジェクトを内包する形で活動するユニットにも長谷部さんは参加する。震災同年、若手のデザイナーが「仙台箪笥の技術を生かした製品を作って、世の中に存在をアピールしたい」と、協力を求めてきた。震災以前から「新しい風を取り入れなければ、漆塗りは衰退していく」という危機感を持っていた長谷部さんは、協力する意思を固めた。木製の米櫃に漆を塗った製品を作製し、2013年日本デザイン振興会のグッドデザイン賞を受賞した。


「世の中に仙台箪笥の技術を発信していかなければいけない」


語り終えると、置いてある道具を拾い上げ、力強く漆を塗り始めた。



【修繕中の仙台箪笥について話す長谷部嘉勝さん】


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河北新報社 記者と駆けるインターン

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