障がい者の想いが託された足こぎ車いす 東北大1年 進藤陽介

「もう足は動かない」。医師にさじを投げられた女性がいた。脳こうそくになり、左半身が麻痺した60代後半。1年後、彼女は自力で階段を登れるようになっていた。彼女を変えたのは「足こぎ」の車いすだった。


吉報を誰よりも喜んだのは足こぎ車いすの専門店TESS(仙台市青葉区)の社長、鈴木堅之さん(41)だ。東北大で試験段階だった足こぎ車いすに可能性を感じ、小学校教諭の職を辞して2008年起業。製造は千葉市にある専門企業に依頼した。現在は社員らスタッフ8名と共に足こぎ車いす「プロファンド」の普及に努めている。


プロファンドは人間が足を交互に出そうとする「反射」の本能を利用。片足が少し動けば、反射の作用によって足が動き、ペダルは回る。乗り続けることで、結果筋力がよみがえるリハビリの効果も望める移動補助器具だ。


自力で移動できると生活の幅は広がる。散歩、買い物、レジャー…。介護者の負担が減り、「介護疲れ」がもたらすストレスの軽減によって、障がい者と介護者の関係が好転するメリットもある。


東日本大震災時は、避難所生活で体がなまったお年寄りらの運動不足解消にもてはやされた。「久々に体を動かせて楽しい」。車いすの周囲に各地で人の輪ができた。


「夢の車いす」も万能ではない。足が極度にやせ細り、もはや反射の力さえペダルに伝えられない人が、わずかながらいる。「期待を胸に足こぎ車いすに乗りながら、叶わなかった人の無念は忘れない。すべて改善につなげる」。鈴木社長は、微弱な筋力でも前進できる電動アシスト付きの足こぎ車いすの開発などを次なる目標に据える。


「障がい者も健常者も希望を持って暮らせる社会のために、足こぎ車いすはもちろん、もっと優れたアイテムを作りたい」。鈴木社長は障がい者の再起を支え続ける。


【自ら試乗し、足こぎ車いすに対する熱意を語る鈴木さん】


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。