A班原稿 瓦施工・植木 「 時代が求める屋根を追う 」

明治学院大3年 木村省吾

東北大2年 三浦侑紀

慶応義塾大2年 湯川うらら

 


仙台市青葉区の住宅街、 アパートの屋根にオレンジ色の瓦が光る。

レンガ調の外装に合うよう、設計士が選んだのは洋風のデザイン瓦。

可愛らしい雰囲気が受け、物件はすぐ満室になった。

「瓦はデザイン性が豊か。どんな建物、景色、時代にも合う」。

青葉区木町にある瓦屋根施工「植木」の社長、植木徹郎さん(36)は力を込める。



創業143年、職人3人を率いる老舗の6代目。

愛知県などの産地から瓦を仕入れ、

地元の住宅から寺院まで幅広い物件を手掛ける。



【人気色のオレンジを手に、瓦の魅力を語る植木さん】





近年の瓦は色調だけでなく、形もS字から直線まで多種多様。

夏は日差しを遮り、冬は屋内の暖気を保つ強みに加え、

雪国でも割れにくいなどの改良が進む。

「大陸から日本に瓦が伝わり1400年。

奈良の古寺では当時の瓦が今も現役です」と瓦の力を誇る。



2011年の東日本大震災で激しい揺れに見舞われても、

自社が近年仕上げた物件は、瓦一枚落ちなかった。

軽量化や固定法の見直しなど、業界を挙げた改良策を取り入れた成果だった。



被災地では瓦が落ちた家もあり、

旧来の「地震に弱い」というイメージを打ち破るには至っていないが、

「現代瓦は地震にも負けない」と言い切る。


津波などで住まいを失った人が多い宮城では、新築ラッシュが続く。

屋根材の多様化で、瓦の需要は全国的に低落傾向にあるが、

瓦と共に生きてきた植木さんは

「瓦の魅力をもっと多くの人に知ってほしい」と意気込む。

 


同じ思いを宿した地元業者の若手8人とタッグを組んだのはその一歩だ。

屋根材の選択に迷う建て主の相談役は、主に建築士。

瓦の良さを理解して積極的に使ってもらおうと、

建築業界の勉強会に出向いたり、

建築士の卵が集う工業高校で教壇に立ったり、

地道な発信で「瓦復権」を試みる。




「日本の屋根はずっと瓦が担ってきた。

復興するふるさと宮城の家々に瓦の安心を届けます」。

被災地の若き瓦屋は、時代が求める屋根を追い続ける。


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。