写真は心  東北大3年 濱田佳那子

記者と駆けるインターン12期、活動日2日目の様子は、

東北大工学部3年の濱田佳那子がレポートします。


 


活動報告の前に、今日から12期のメンバー8人を順次紹介していきます!

本日紹介するのは、メンバーただ一人の1年生、川村昇君です。


              ↑写真1 真剣に話を聞く川村君(右)


東北大教育学部入学を期に盛岡市の実家を出て、現在は仙台で一人暮らし。

チャームポイントは紺のネックウォーマー。暖められた喉は、得意の合唱に活かされます。

1年生ながらインターンに参加するまっすぐさと、

のんびりとした空気で、早くもいじられキャラとして同期から愛されています。

12月のインターン終了まで、「かわしょー」を温かく見守ってください!




ではここから、2日目の内容をお伝えします。

2日目の10日(火)は、写真講座が開講されました。

講師は河北新報写真部副部長の門田勲さんです。


冒頭、なんとドローン登場です。

実際に撮影現場で使用されているものです。

世間で話題のドローンを、生で見るのが初めてならば、

実際に舞い上がる姿を目にするのも初めて。

安全のため床から少し浮かぶ程度のデモでしたが、

昆虫の羽音のような「ブーン」という音と、

ホールの空気が揺れるのを感じるほどの風を巻き起こしながら離陸する様子に、

目撃した面々からは「おー」という感嘆の声が上がりました。

 


他にも、写真部員自作の撮影ツールという巨大な「自撮り棒」のような竿が登場。

伸ばせば5メートルはありそうな物干し竿のような棒で、

先端に小型カメラを取り付け、それをタブレットで遠隔操作。

カメラマンがカメラを構えるには困難な高所などでの撮影が可能になるそうで、

このツールを使って撮影された仙台七夕を高所から俯瞰した写真も見せてもらいました。

これまで見たことのない新鮮なアングルからの写真で

受講生からはまたも驚きの声が上がりました。



                  ↑写真2 飛行中のドローン


つづいて、写真を見ながら撮影の心得をお話ししていただきました。

「写真は心を映し、相手と重ねた思いを伝える」

報道写真の使命は、後世に情報を残すこと、

単に状況を映すだけでなく、潜んでいる背景まで考えさせること、

その二つであると門田さんは言います。


震災直後に撮影されたという1枚の写真。

津波で何もなくなってしまった土地を

被災者が手を取り合って歩くこの写真には、

そのような状況のなかでも「人が人を大切に想っていた」ことが記録されています。

単なる辛く悲しい写真ではないのです。


震災発生直後の混乱期、多くの人が亡くなって棺桶さえも足りなくなって、

夫の遺体を漁業用の木箱に入れるしかなかった状況を写した写真がありました。

申し訳なさそうな表情で、遺体に手を合わせる妻の高齢女性。

本来は水揚げした魚を収める木箱に亡き夫を収めるしかなかった窮状と、

それでも何とか少しでも手厚く葬りたいという葛藤を捉えた一枚でした。


そうした震災の状況下を映した写真を見ていると、私は涙が出そうでした。

そこに映る人々、そこに暮らした人々のことを想像し、

写真に写っている人々の内面だけでなく、

この惨劇に立ち会い、レンズを受けたカメラマンの心も受け取った感覚がありました。



                    ↑写真3 震災時の写真を解説


 


撮影の心構えを、門田さん言葉を借りて表現すれば

「惚れたものをリスペクトして半歩踏み込むこと」と受け止めました。

伝えたいと思った相手を思いやり心の距離を縮めれば、

相手が知らず知らず与えられる「瞬間」があるともいいます。

そして何りも、撮影者自身が「伝えたい」「伝えよう」という問題意識を持つこと。

これがなければ、見る人の心を動かすことはできないということを、

門田さんの講義から痛感しました。


 


三陸の浜を津波が襲った翌朝、

津波にのまれて傾いた家のベランダで、

タオルを振って救助を求める女性の姿を、門田さんは上空のヘリから撮影しました。

「助けることもできない、ただ撮ることしかできない無力な自分に、

罪悪感を感じながらシャッターを切っていた」そうです。



その後、この一枚は写真集に載って出版されました。

すると、被写体となった女性から門田さんに手紙が届きました。

「あのとき懸命に生きようとしていた自分を、写真の中に見つけた。

自分が生きたいと思ったことを見せてくれた」

意外にも、感謝の言葉が綴られていたそうです。


このエピソードを聞いたとき、私の中に、心を全部包み込むような、

大きくて暖かい気持ちが広がりました。

撮影者が受け取った思いがそのまま、写真から本人に返って、

自分の思いが自分を励ました─。

写真に込められる「思い」は撮影者のものであり、

被写体のものであることが、

門田さんの言う「相手と思いを重ねる」ことが、まさに表れたエピソードでした。


構図やアングルについての解説もありました。



 ↑写真4 アングルについて解説。写真は自撮り棒を使って撮った一枚です。


 


対象は同じでもそれらの工夫によって見え方は違い、

それはつまり伝わり方が違うということになります。

ブログ用の写真を撮影しながら講義を聞いていた私は、すぐにそれを理解しました。


そのままの目線で撮ってみたり、しゃがんで見上げてみたり、

試してみると、なるほど受ける印象が全く違います。

とはいえ違うのはわかっても、「これだ!」という構図は、

そう簡単には見つかりません。

「変化を発見しながら、たくさん撮影することしかない」と感じました。


 


写真講座の後は、ABCの3班それぞれで取材先を決める話し合いをしました。



                     ↑写真5 話し合うC班


どんな企業がいいか? どうやって探すのか?

どの班もなかなかいいアイディアが出ないようでした。


班員と予定を確認しあうと、自分たちが取材に出られる時間が、

思ったよりも少ないことに気づきました。

「とにかく早めに取材先を決定しなくては始まらない!」

活動2日目にして、早くも焦ってきました。


 


門田さんからは写真撮影の宿題が出されました。

テーマは「冬の色」。

みんなはどんな写真を撮るのでしょうか?

私は全く何も思い浮かんでいません!



提出は16日まで、門田さんから寸評をいただく日程は17日と決まりました。

うーん、冬の色…。

難題を前に先が見えず、暗く沈んだ私の心にレンズを向けたくなっています。


 


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。