若き広告塔としての挑戦 東北大2年 三浦侑紀

 「過ごしやすさがまるで違う。

とくに夏の暑さ。瓦屋根がどれだけ太陽の熱を遮ってくれていたのかを肌で感じた」。

そんな客の声が仕事の励みだ。

植木徹郎さん(35)は、仙台市青葉区木町に店を構える瓦屋根工事会社「植木」の社長。

創業143年、職人3人を率いる老舗の6代目だ。

愛知県などの産地から瓦を仕入れ、住宅から寺院まで、地元の幅広い物件を手掛ける。


 


 瓦以外の屋根材の家に住んだ人が、また瓦に戻ってくるケースは少なくない。

瓦の特長は耐熱性と保温性だ。

夏の暑さをしのぎ、冬の寒さを和らげる─。

客の瓦への「アンコール」は、魅力がしっかり伝わったと感じる瞬間だ。


 


 一般に瓦屋根への抵抗感があるとすれば、施工費用の高さと耐震性だ。

確かに、瓦は他の屋根材と比べると施工費用は高い。

「地震に弱いのではないか」という瓦屋根への不安も、

2011年、東日本大震災に見舞われた宮城では根強い。


 


 それでも植木さんは屋根材に瓦を推す。

瓦は定期的な点検を怠らなければ、

長い年月が経っても見た目も機能も損なわれない。

長い目で見ると低コストだ。

耐震性にも抜かりはない。

瓦の軽量化、落ちないよう小さな留め具一つにまでこだわり、

業界挙げての対策が進んでいる。

実際、近年「植木」が請け負った家の屋根瓦は、

東日本大震災による激しい揺れに耐えた。


 


 取材中、植木さんは何度か「実は人前で話すことが苦手だった」と打ち明けた。

職人気質の人が多く、PR活動に力を入れてこなかった瓦業界も、

「変わる時が来た」と自身を鼓舞する。

「瓦屋根の家の過ごしやすさを、もっと多くの人に理解してもらわなければ」。

気恥ずかしさを押して、人前に立つ。


 


 新築を考える上で屋根材に悩む建て主の相談役となるのは建築士だ。

瓦の魅力を客に伝えてもらうためには、

まず建築士に瓦の素晴らしさを理解してもらう必要がある。

だから、建築業界の勉強会に出向いたり、

建築士の卵が集う工業高校で教壇に立ったりと、

植木さんをはじめとする若手業者は地道な活動を始めようとしている。

瓦業界の若き広告塔は、瓦を愛する人の輪を自ら広げる。


 



【瓦が生み出す景観美を背に、瓦の魅力を語る植木さん。自社施工の建物にはひときわ愛着が増す】


--------

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。