一緒に裸に 東北大3年 野間早百合

記者と駆けるインターン2016年春、活動日2日目の様子は、

東北大3年の野間早百合がレポートします。


私たちの活動拠点である河北新報社の別館ホールでは、開始時刻の10時より早く集まったインターンシップ生たちが、和やかに談笑していました。昨日行われた交流会を経て、お互いの距離が縮まってきたようです。


 


10時から12時にかけて、取材の基本を、河北新報社デジタル推進室記者である大泉大介さんに教わりました。取材の持ち物から方法、記者の心構えまで、取材に必要なエッセンスを学びました。



 


大泉さんからの教えの中で特に印象に残っているのは

「取材相手と一緒に裸になる」という考え方です。


 取材は時に、取材相手の弱みや、話したくないことをさらけ出させてしまうことがあります。そのとき、記者も一緒に相手に寄り添うように自分の心の内を打ち明けることができれば、相手の心の負担を軽くし、安心して話せるように優しく背中を押すことができるかもしれません。



これは取材のみならず、普段の人付き合いにも当てはまることです。様々な困難、悩み、課題、あるいは幸せや喜びを抱えている人たちに寄り添うためには、自分の知識や経験の引き出しを増やし、また整理しながら、相手と一緒に裸になる姿勢を示すことが必要なのだと思います。



午後は写真部カメラマンの門田勲デスクによる写真研修でした。


門田さんは震災直後に撮影した写真をスクリーンに映しながら、そのときの状況や心情などを打ち明けました。



門田さんは、震災直後の2011年3月12日早朝、東松島市など津波で大きな被害を受けた沿岸部を上空から撮影しながら、「無力感におしつぶれそうになった」と言います。


「恐怖で歯がガチガチと震えた現場もあった」

どれだけ過酷な状況下でシャッターを切り続けたのか、

プロの底力を感じさせるエピソードでした。




「写真を撮ることしかできないが、その写真が将来の希望につながってほしい、一筋の光を照らしたい」と門田さん。


被災地の最前線でカメラを構え続けている人のメッセージは重く、

インターン生一同、背筋が伸びる思いがしました。



私はこの話を聞きながら、『ハゲワシと少女』という写真を思い出していました。

1994年に報道写真家のケビン・カーター氏によって撮られた写真です。




餓死寸前の少女と、彼女を背後から狙うハゲワシを収めた一枚。

スーダンの飢饉を伝える写真として高く評価される一方で、

「写真を撮る前に少女を救うべきだ」との批判の声も大きく、

報道写真の倫理を問う議論を巻き起こしました。


 


「写真を撮る余裕があるなら一刻も早くハゲワシを追い払ってほしい」という思いは、想像に難くありません。けれど写真を報道することで、国の窮状が世界に伝わり、支援物資やボランティア人口が増えるかもしれない。それが結果的に少女を救うことになるかもしれない─。

希望の光を見出すために、無力感や絶望に抗いながらシャッターを切ることが、報道写真家の使命の一つなのかもしれません。


 


座学の後は、実践です。

門田さんから与えられた課題に沿って、インターン生18人が

それぞれ写真を1枚ずつ撮ってくるというミッションです。



課された課題は「春の光」。

次回の活動は、2月22日月曜日です。

インターン生一同、明日21日の休日を活かして、「春の光」を探してきます! 


 


--------

河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。