命吹き込む額縁づくり 東北大4年 佐藤恆士朗

 仙台市青葉区栗生の住宅地に「杜の額縁工房」はひっそりとたたずむ。

壁には、色とりどりの額縁が並ぶ。

依頼品の絵画を見つめるのは、工場長の小野寺正人さん(59)。

客と相談しながら、一つの額縁を手に取った。

絵の色合いやタッチに馴染んだマッチングに、依頼客も満足げだ。



 注文品一つ一つに合わせ、オーダーメイドで額装を手掛ける。

200種類にも上る模様や色味の異なる額縁と、作品と額縁の間を埋める厚紙を選んでいく。

依頼品の中には野球のユニフォームや初めてはいた赤ちゃんの靴、蛇の抜け殻まである。

思い出の品に合わせ厚みや大きさの異なる額装をする。



額が決まったらあとは隣の作業場での組み立てだ。

その際、客が作業している様子が見えるように、店と作業場の仕切りをなくすなど、

小さな気配りを欠かさない。



 額縁の世界に飛び込んだのは19歳の時。

以来いくつかの額縁製造会社に籍を置き、依頼品が引き立つよう腕を磨いてきた。


 現在の工房を開く転機となったのは、2011年の東日本大震災。

当時働いていた会社の退職を余儀なくされた。

失意の中にいたが、馴染み客からの「また額縁を作ってほしい」という言葉が後押しとなり、2012年3月、絵画をレンタルする会社の傘下として工房を開いた。




 10年来の付き合いという在仙の画家、古山拓さん(53)は

「細かい依頼を気軽に頼めることが小野寺さんのいいところ。絵は額がないとすっぽんぽんの状態。額縁という服で印象が変ってしまいますから」と力を込める。

 絵画や写真も額縁があって初めて作品として形を成す。

依頼主にとって思い入れのあるものだからこそ、オーダーメイドで作る意味があると小野寺さんは考えている。


 最近は「なんでも額装してくれる」という口コミが広がり、

美術家のみならず多くの客が来店する。


 「この仕事は手が動かなくなるまで続けるよ」と微笑む小野寺さん。

思い出の品に命を吹き込む額縁作りに生涯をささげる。



「どんな品物も飾ってもらいたい」と笑顔で語る小野寺さん


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。