お客さんと歩む額縁づくり 東北大学3年 三好桃子

持ち込まれる品物は多岐にわたる。趣味の刺繍作品、赤ちゃんの靴、レース装丁の手帳…。仙台市青葉区栗生にある「杜の額縁工房」の工場長小野寺正人さん(59)は「たいていのものは額縁におさめられるよ」と胸を張る。


店内にずらりと並ぶのは、色や模様の異なる約200種類の額縁サンプルだ。依頼客は額縁と、品物と額縁の間を埋める厚紙の組み合わせを選んでいく。品物を引き立てる組み合わせが決まれば、小野寺さんは寸法に合わせてフレームを仕上げ、品物を収めた状態で後日手渡す。


「既製品では収められないが、どうしても飾りたい」。大事な品物を抱えてやってくる客の思いに応えたいと、厚みのある物も綺麗に収める方法を模索した。工房で試行錯誤を重ね、要望に一つ一つ応えていくうち、「どんなものでも見事に収めてくれる額縁屋」と評判になった。



【お客さんとのやりとりを通してぴったりの額縁を探していく】


この仕事に携わって40年になる。2011年の東日本大震災では勤めていた額縁の製造販売会社を辞めざるをえなかった。落ち込んだ時期もあったが、馴染みの客の「またやってよ」という声に背中を押された。絵画レンタル会社傘下で今の工房を設立した。


在仙の画家古山拓さん(53)は「絵は描き上がってもそのままでは裸の状態。額縁があって初めて人前に出せる」と縁の下の力持ちに感謝する。作品の印象を決める大事な仕上げの工程を小野寺さんに任せて10年以上になる。「特注品も安心して頼める。長く顔を合わせてやってきた額縁屋さんの一人だから」と信頼を寄せる。


心に残る依頼がある。「明るい雰囲気で仕上げて欲しい」と遺影写真が持ち込まれた。依頼主は昔から付き合いのある客。遺影は若くして亡くなった息子のものだった。故人が打ち込んでいた仕事の話を、じっくりと聞いた。「何としても満足してもらえるものを」と、手先に思いを込めた。


工房を開いて4年。当初は大半が以前からの常連客だったが、人づての紹介で新たに訪れる客も多くなってきた。「いつまでも続けたい。手が動かなくなるまでやりたいね」。思い出をそばに感じたいという願いに、寄り添い続ける。


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。