伝えたい 石巻産タラコの魅力 東北大1年 川村昇

 仙台市若林区新寺の閑静な住宅街。ビルの一角にひっそりとたたずむ「たらこカフェ」。引き戸をガラガラと開けると、ゆったりとした音楽が聞こえ、落ち着いた雰囲気に包まれる。オーナーの高橋好子さん(58)が、このカフェの仕掛人だ。カフェでは、フランス料理を参考に作った「たらこのケークサレ」や、タラコを生地に練りこんだコロッケなど、こだわりの創作料理が味わえる。


 オーナーの実家は、1972年の創業から、石巻で水産加工食品を製造してきた「マルイチ高橋商店」。料理の材料は高橋商店から仕入れており、店頭では、商店が製造したタラコや金華サバなどの販売も行っている。


 高橋さんの前職はディスプレイデザイナー。デパートのショーウインドーの配置や結婚式場の装飾など、空間設計を行う仕事だ。東北各地を飛び回る仕事に体力の限界を感じ、以前から興味のあったタラコ販売に着手し始めた。


 転職前は「石巻産のタラコの魅力を多くの人に知ってもらおう」と、デザイン事務所の一角でタラコの販売を行ったものの、客足は伸びなかった。「販売をするだけでは、魅力をアピールしきれない」。考えた末、実際に味わうことのできるカフェでの提供を思い付いた。


 オープンは2011年5月9日。同年3月の東日本大震災によりライフラインが寸断され、予定より2カ月延びた。実家も、津波でタラコの加工場が流され、甚大な被害を受けた。「カフェのオープンはやめてしまおうか」とまで考えたが、商店が営業再開に向け動き出したことに触発され、オープンに踏み切った。馴染み客も増え、石巻産タラコのPRに手ごたえを感じ始めた今、決断に後悔はない。


 高橋商店と提携し、カフェで提供する料理を通信販売で売り出すことを検討している。「石巻のタラコのおいしさを、より多くの人に知ってもらえるように」。これからもタラコの魅力を発信し続ける。


↓客に料理を提供する高橋さん(中央)



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河北新報社 記者と駆けるインターン

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