B班原稿/オカザキスーパー 貫く住民第一 丘の街で踏ん張る
東北大4年 田村崇明
国際基督教大2年 奥瀬真琴
東海大1年 猪股修平
国際基督教大2年 奥瀬真琴
東海大1年 猪股修平
8月下旬の夕方、威勢のいい声が響く特売日の店内は、高齢の夫婦や親子連れでにぎわう。「荷物配達しましょうか」。レジの店員が、買い物かごを食材でいっぱいにした年配の女性に話し掛ける。「お願いしようかしら。助かるわ」。支払い後、荷物は配達用トラックへ。坂道を登り、女性宅に届けられた。
仙台市青葉区中山にある「オカザキスーパー」は、1971年創業の食品スーパーだ。社長の岡崎敏郎さん(49)は味や健康を重視した食材販売を心掛ける。魚介類はなるべく冷凍せず、総菜の揚げ物には低コレステロールのキャノーラ油を使う。「値段じゃ大型店には勝てないからね」と岡崎さん。坂道の多い住宅地、進む高齢化、増える独居…。地域の課題に向き合う先に商機を見いだす。
自前の配送サービスを始めたのは約35年前。創業者で父の故俊雄さんが社員の意見を取り入れ配送車を購入し、無料で配達してきた。地域の高齢化が進み、来店もままならない客が増えてきたこともあり、10年前からは電話注文にも対応。地道な宣伝が功を奏し、サービスは徐々に支持を獲得した。
東日本大震災では、本震の30分後、水やカップ麺、缶詰などの商品を店の外に並べ、「地域の台所」としての期待に応えた。社長自ら問屋を回り、商品を集め、店に並べた。「オカザキはやっている」。夜遅くまで店頭を車のライトで照らし販売する様子が口コミで広まり、店の前に長蛇の列ができたこともあった。
地域の信頼を得る一方、大型スーパーの進出や震災後の電気料金の引き上げで経営は厳しい。従業員38人のことを思うと不安が募るが、岡崎さんは中山地区で踏ん張るつもりだ。脳裏には地域住民の顔も浮かぶ。「オカザキがなくなったら俺が干からびちゃうよ」(80代男性)という常連客もいる。岡崎さんは力を込める。「店を存続させることが、われわれの使命だ」。創業から間もなく半世紀、オカザキスーパーはこれからも、中山と苦楽をともにする覚悟だ。
【総菜コーナーで接客する笑顔の岡崎社長】
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