C班原稿/ストーリーインストーン 石に思いを託して

中央大1年 大塚雄大

弘前大3年 大庭菜摘

東北大2年 三木拓弥

法政大3年 萬紗帆


 東日本大震災の津波被害で閉校した仙台市宮城野区の中野小跡地に8月、石のモニュメントが建立された。慣れ親しんだ蒲生の自然を残そうと、全児童40人が昨年度、モザイクアートを制作した。作品を石の額で縁取り、後世に伝える形に仕上げたのは、泉区朴沢の石材販売店「杜の石屋 ストーリー イン ストーン」である。「中野小が紡いできた歴史を残すことで、地域にも感謝される。こんな幸せな仕事はないです」。社長の佐藤真也さん(41)はかみしめるように語った。


 会社を立ち上げたのは2005年1月、29歳の時だった。父が営む採石会社から独立して以来、「石屋として、石でできることは何でもやる」との信念を貫いている。


 墓石の設計を中心に、表札や灯籠、レーザーでで写真を石に転写した商品まで、石に関するさまざまな注文を請け負う。ガラス張りの明るいショールームに並ぶのは、100種類以上の石のサンプル。個々のニーズに応えるため、宮城産から南アフリカ産まで豊富に取りそろえる。


 営業部長の鶴巻伸さん(51)は「他社にはない品ぞろえ。ここまでくるとコレクションですよ」と、社長のこだわりに苦笑いを浮かべる。


 お墓を新たに作る人は、耐震性やデザイン性を重視し、欧米風で横長のタイプを選ぶ場合が多い。依頼者の思いに応えるため、佐藤さんやスタッフは要望を丁寧に聞き取り、何度でも相談を繰り返し、納得のいくまでデザイン変更に応じている。


 どこまでも客に向き合うのは社名に込めた思いがあるからだ。「石屋の仕事は、依頼者の物語を石に刻むこと。メッセージは次代に引き継がれ、唯一のものになります。多くの人に影響を与えるからこそ最後まで妥協はしません」。依頼者の喜ぶ姿を見ると、自分たちの提案が一番だったと実感できるよという。 「一日の笑顔の時間が増えることが幸せにつながる。お客さまの笑顔づくりのお手伝いをこれからもしていきます」。仕事に対する誇りと責任は石のように揺るがない。



【中野小跡地のモニュメントを見つめる佐藤さん】


 


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。