D班原稿/SEA SAW 人と浜つなぎ にぎわい創出

白鷗大3年 吉田福太郎

弘前大3年 工藤俊

東北福祉大3年 菅野歩美

仙台白百合女子大1年 佐藤和奏


 


 「取っちゃダメ!」。大皿に盛られたパスタを支配するように、巨大なカニが抱え込む。見る者を圧倒する「渡りガニのパスタ」は、「アート・カフェ・バーSEA SAW(シーソー)」の看板メニューだ。宮城県七ケ浜沖で捕れた地物を丸ごと1匹使っている。引き締まった身に、ほのかな酸味のするトマトクリ-ムが絡まる。1日10食限定。ほとんど毎日完売する。


 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた七ケ浜町菖蒲田浜に2016年5月、店は産声を上げた。コンセプトは「仙台圏から1番近いビーチリゾート」。東北最古の海水浴場として知られ、海の幸と景観を生かした癒やしの空間を提供する。


 テラスに出ると真っ白な防潮堤を望め、奥からは浜の潮騒が聞こえる。木の香りが心地よい店内には、流木や貝殻の装飾があふれ、陽気な音楽が小気味よく流れる。「開店から7月までの来客数は約7千人。スタートは上々ですが、失敗の連続で満足していません」。オーナーの久保田靖朗さん(33)は自分を奮い立たせる。


 出身は千葉県。東日本大震災の復興ボランティアとして12年6月にやって来た。。どこからでも海が見える自然の豊かさに引かれた。「復興に貢献したい」。強い思いとともに、住まいを町に移した。


 願いは「浜のにぎわいを取り戻すこと」。その一歩として、若い人を浜に呼び込もうと考えた。何度も訪れてもらえるような、気軽に集まれる場所とは何か―。思案の末に、地元の人たちに「カフェ」を提案した。


 思いは通じ、店のコンセプトをはじめ、内外装、メニューまでを一緒に練り上げた。浜の現在・過去・未来を見通す拠点にしようと、「SEA(海)」「SAW(見る)」と名付けた。


 町内で海産物店を営む渡辺保二さん(62)は「地元住民だけで復興させるには限界がある。久保田さんの存在は頼もしい」と期待を寄せる。


 まちの声を力に、今後も久保田さんは七ケ浜とともに歩み続ける。菖蒲田浜沿いの道に店が立ち並ぶ日を夢見て。


 


【真剣な表情でコーヒーをいれる久保田さん。視線の先には菖蒲田浜の未来がある】


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河北新報社 記者と駆けるインターン

このブログは、2012年夏から2019年春まで通算19回行われた、大学生向けの記者体験プログラム「記者と駆けるインターン」の活動報告です。 2019年夏からは内容や期間が異なりますので、ご了承ください。 詳細は最新の記事をご覧ください。