【A班原稿】岩見組 地域の声技術でかたちに
東北学院大 3年 市川文章
法政大 2年 北本優葉
東北大 2年 工藤さやか
「身近な場所で転んで骨折するお年寄りが最近多くて・・・」
2014年秋、宮城県山元町で地域住民から高齢者の転倒によるけがを心配する声が上がった。高齢者は一度骨折すると、体が一気に弱る場合が多い。地元の建設会社「岩見組」は、問題を解決しようと庭に敷き詰める「里山マット」を半年がかりで開発した。
木のチップでできたマットを踏むと、土のように柔らかい。転んでも衝撃が吸収されるため、けがの心配が少ない。2代目となる岩見圭記社長(51)は「地域にあるものを使って、地域の困りごとを解決したいと思った」と話す。
1972年創業の岩見組は地元の道路工事や建物の基礎工事を手掛けてきた。現在は仕事の8割近くが東日本大震災の復興事業で、新たな市街地づくりを担う。2000年代に入り、公共事業が年々減少し、会社の先行きに不安が募った。「町内に眠る需要を掘り起こしたい」と地域の声に耳を傾けるようになった。
震災が起きたのは、そんな時だった。沿岸部を津波が襲い、多くの町民が犠牲になった。がれきの運搬や全半壊した家屋の解体−。次々仕事が舞い込んだ。復興需要で経営は持ち直した。一方で町内には生活の立て直しに懸命な人たちがいる。「忙しくていいね、との言葉が耳から離れなかった。震災で仕事を得る葛藤に苦しんだ。「何か役に立てないだろうか」。地域への思いが一層強まった。
復興需要はピークを過ぎた。地域に必要とされる製品で、利益を生み出す仕組みづくりが急がれる。先陣を切る里山マットの品質が今後を占う。より柔らかく、チップが剥がれにくくするのが課題だ。わらなど新たな素材が使えるかどうかの研究も重ねている。
地域が栄えてこそ、会社も栄える。「岩見組がないと困る、そんな存在でありたい」。岩見社長は先を見据える。
道半ばの里山マットを手に、新たな戦略を練る岩見社長
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