【B班原稿】ふくふくやま 悔いなき別れ支えたい
早稲田大3年 荘司結有
京都女子大3年 佐々木南奈
上智大2年 伊藤怜奈
法政大1年 藤原陸人
花を、そっと手向ける。慣れ親しんだわが家でペットとの別れを惜しむ厳かな時間。仙台市太白区日本平にある「ふくふくやま」はペット葬儀を訪問で行う。犬や猫はもちろん、ハリネズミや蛇など「ペットを手厚く供養したい」と願う飼い主の思いに応える。
丸山徹歩(てっぽ)さん(30)、由(ゆき)さん(28)夫妻が営む。起業の原点は2012年、由さんと愛犬との別れにある。16年間を共にし、獣医師系大に進むきっかけをくれた「弟のような存在」だった。悲しみの中、民間会社に葬儀を頼んだが、気が動転し、十分な別れができず、未練が残った。「自分のような後悔をしてほしくない」。ペットアパレル会社勤務とペット仏具販売を経て16年4月、ペット火葬業者として一歩を踏み出した。
葬儀の依頼は昼夜を問わず舞い込む。作業着の同業者が多い中、スーツ姿の徹歩さんが自前の火葬車で駆け付け、訪問先でだびに付す。「思い出が詰まった場所で、穏やかな旅立ちを」との願いから、訪問に重きを置く。
近隣への気配りも忘れない。火葬車は社名もロゴもない、真っ白な仕立て。においと煙を抑えた炉で、静かに天に送る。依頼主には炉に納める場面と収骨の時間に、立ち会えるようにしている。最後まで心を込めた見送りができた依頼主は「気持ちが晴れた」と感謝する。
これまで東日本大震災で被災したペットの旅立ちも数多く見届けてきた。災禍の中、人間を優先せざるを得なかったことに負い目を感じている家族は少なくない。だからこそ、「最期は温かく見送りたい」という願いが被災地には染み込んでいると感じる。
火葬の後、小さな骨つぼを依頼主に手渡す。「安らかに旅立っていきましたよ」。優しく声を掛ける。涙でぬれた依頼主の頬に、かすかに笑みがさす。
「今は悲しくても、いつか笑顔で思い返せる。そんな別れを支えたい」
一匹一頭、一期一会。灰になっても消えない思い出の花を、依頼主の胸に咲かせる。
思いやりを形にした火葬車で、丸山さん夫妻は「家族の別れ」を支える
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