【E班原稿】伝統の良さ探し伝える 仙台木地製作所
慶応義塾大3年 高橋杏璃
東北大2年 山田剛
明治大2年 落合美紅
東京農業大1年 吉田萌香
回転するこけしの胴に、小筆をゆっくり当てると、白木の肌に鮮やかな青の輪が広がっていった。これまでの常識を破る藍色の「インディゴこけし」。仙台木地製作所(青葉区芋沢)のこけし職人、佐藤康広さん(41)の意欲作だ。
「青いこけしってないよね」。ファッションブランド「ビームス」の担当者との会話が、インディゴこけしを生み出すきっかけとなった。青色は発色が弱くて退色が早く、絵付けにあまり使われてこなかった。二度描きせずしっかり色が乗る染料をどう開発するか。康広さんは、大正時代から仙台で親しまれてきた藍染めに答えを求めた。納得する色に仕上がるまで1年近くを要した。
こけしと藍染めという二つの伝統を組み合わせたことで、モダンな見た目となり、販売会では1時間で数百本が売れるほどの人気が出た。反響の大きさに驚きつつも「新しいこけし」と言われるのには違和感がある。「(藍染めを使って)むしろ古くしてやったといいたい」。
8年間勤めた測量会社を辞めた後、2010年に父正広さんへ弟子入りした。前年に正広さんは黄綬褒章を受章。父の手仕事や伝統こけしの魅力にあらためて気づいた康広さんは、跡を継ぐ決意を固めた。
父の教えは「木をい(活)かせ」。木の性質を知り、無駄なく活用せよとの意味だ。康広さんは自在に刃物を扱えるまで練習を重ねた。新しい削り方を試すこともあったが「たいていは父のやり方が効率よく、削った面もなめらかになるんだ」と悔しそうに笑う。仕事をするほどに、奈良法隆寺建造から使われてきた、ろくろびき技術のすばらしさを実感する。
「古いものはだめだという風潮があるが、伝統の中に良いものはたくさんある。先達の『引き出し』を開けて、新たな発見をしたときにワクワクする」と力を込める。今は年に数回、県内の若手工人との集まりに参加。たんす職人らと作品について語り合い、互いを高め合う。
「伝統に根差し、多くの人の手に取ってもらえる作品を作りたい」
インディゴこけしの絵付けをする佐藤康広さん
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