熊谷農園(仙台市泉区)「支えられ、前を向く」東海大学2年 窪田昇

F班 東海大学 窪田昇

支えられ、前を向く

熊谷農園(仙台市泉区)


 「農業で大事なのは、作り手が自信を持つこと」。仙台市泉区朴沢で「熊谷農園」を営む熊谷幸夫さん(62)は熱く語る。

幸夫さんと、妻の幸江さん(54)が営む農園は、原木シイタケの生産、加工、販売までを自ら手がける。菌床栽培に比べ手間がかかるが、肉厚で歯ごたえがあり、香りと味が濃厚なのが特徴だ。  

 幸夫さんは、原木シイタケを栽培する中で大切なことは、「土壌に逆らわないことだ」と言う。朴沢特有の土は、湿気と肥沃に富む。その土に並べたほだ木が、養分を吸い上げ、出来たシイタケは、幹から吹き出すように丸々とした姿を現す。

 熊谷さん夫妻は、1年で1万4千本のシイタケを栽培する。「自分のシイタケを待っている人がいる。直売所に持って行くと30分で売れきれる」。熊谷さんのシイタケは、多くの人から愛されている。

 だが、東日本大震災による東京電力福島第一原発事故の影響を受けた。シイタケのほだ木が、放射性物質を吸い上げ、安全基準を超える数値が検出された。「ショックだった」と熊谷さんは振り返る。転機が訪れたのは2013年3月。支援のクヌギが5千本届いた。以前から繋がりの有る熊本県のシイタケ農家から支えられ、原木栽培が再開した。

 熊谷さんのシイタケを扱うホテルや居酒屋からも「熊谷さんのシイタケを是非使いたい」と申し出があった。「大変だった時期を救ってくれた人がいた。勇気づけられた」と笑顔を見せる。現在は、安全性を考慮するため、大分県の農家から年間6千本のシイタケを仕入れている。

 15年4月には、熊谷農園のロゴーマークをパッケージに使用した。ブランド化を図り販促活動をしている。直売所では、レシピ紹介と試食の提供にも力を入れる。熊谷さんオススメの、オリーブ油とめんつゆで蒸し焼きにする調理法など、用途は多様だ。震災後3割まで落ち込んだ売り上げは、少しずつ向上している。

 周りの人からの支えがあり、苦難を乗り越えた。熊谷さんはもう一度、自信を取り戻した。丹精込めて実らせたシイタケが、今日も人々の元へと届く。


▼自信を持って作り上げた、原木シイタケを収穫する熊谷夫妻。


河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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