洋菓子店リモージュ(宮城県亘理町)「ケーキに願う 皆の笑顔」東北学院大3年 齊藤麻衣

 ケーキひとつひとつに、見て食べて笑顔になってもらいたい願いを込めている。「やっぱり俺は、人情と優しさのある亘理が好きなんだよな」。ほほを緩めそう語るのは、宮城県亘理町の洋菓子店「リモージュ」の店主、村上親義(ちかよし)さん(70)。仙台市でもケーキ屋を経営していたことがあり、現在の店は今年で創業13年目だ。「安い、美味しい、可愛い」をモットーに、1日200個以上のケーキを作る。看板商品は「苺シルキー」(250円)。ピンク色の求肥(ぎゅうひ)が、スポンジ、生クリーム、酸味や肉質にこだわった亘理特産のイチゴ3粒を包んでいる。

 2011年3月11日。東日本大震災の津波は、海から約2.5キロメートル離れた「リモージュ」にも押し寄せた。大事なオーブンやショーケースは浸水し、お客さんから頼まれていたデコレーションケーキは台無しに。「もう一度ここでケーキを作れるだろうか」。不安が募るばかりで、店を移すことも検討し始めた。その時村上さんの背中を押した言葉があった。「またここで美味しいケーキを作ってほしい」。地域の人たちの声だ。「リモージュ」が必要とされていることに、村上さんは気づいた。その後、店内の泥かきや設備の復旧を続け、震災からわずか3カ月で販売をスタートする。避難所の亘理中学校にいる人の笑顔のために、村上さんは車を走らせ、無償でショートケーキ100個を届けた。食べた人は、顔がほころんだ。これが、再開して初めてのケーキだった。

 複数まとまって売れたり、デコレーションケーキの注文が増加したりしている。地域の人が「リモージュ」の味を求めていることを、ケーキは教えてくれる。「地域の人が求める当たり前は変えちゃいけない」。震災前からの味や、自慢のやわらかでくちどけのよいスポンジを守り続ける。

 シャカシャカとクリームをかき混ぜる音。お客さんとの微笑ましい会話。今日も「リモージュ」は、地域の笑顔をケーキに願う。

地域の笑顔のためにケーキを作る村上親義さん(70)

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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