洋菓子店リモージュ(宮城県亘理町) 「変わらぬ味 亘理から」 上智大学2年 伊藤奏乃

 真っ赤に熟れたイチゴ、なめらかな生クリーム、溶けるようなスポンジ。宮城県亘理町にある「リモージュ」は、町内外にファンがいる小さな洋菓子店だ。ケーキを作るのは、店主の村上親義(ちかよし)さん(70)。毎朝8時から、たった1人で200個以上のケーキを作る。21歳でケーキ職人になると、仙台で店を構えた。縁あって亘理に店をオープンし、13年の時を刻んだ。

 2011年3月、東日本大震災の津波が、店の床上1メートルまで押し寄せた。海水に浸かったオーブンや冷蔵庫は使いものにならなくなった。それでも、常連客の「やめないでね」「またここでケーキ作ってね」という声に、再び同じ場所で店を開く勇気をもらった。地元の大工やボランティアらの力を借りて、震災から3ヶ月後、リモージュは同じ場所で再スタートを切った。

 看板商品は、亘理産のイチゴを使った「苺シルキー」。3粒のイチゴと生クリーム、スポンジが、ピンク色の求肥(ぎゅうひ)に包まれている。特にこだわって作る生クリームとスポンジは、口に入れると一緒に溶け出すなめらかさが自慢だ。さらに、売られているケーキの値段が300円前後という価格の中、苺シルキーは、さらに安い250円で販売する。地域に根ざした洋菓子店を目指すからこそ、低価格を貫く。「安い、美味しい、可愛い」が、開店当初から変わらないモットーだ。

 「当たり前の味が、変わっちゃいけない」。震災を機に、亘理から離れることになった住民は少なくない。近所にあったスーパーや商店街は、徐々に姿を消した。あの日から7年半。リモージュに求められているものは、いつ食べてもほっとできる、変わらない味だと感じる。それを守るために、溶けやすい夏には固めの、固まりやすい冬には柔らかめの生クリームを使い、いつ食べても、いつもの味を届けられるよう工夫を凝らす。

 「食べた人が懐かしいって思うような、安心できる味でありたい」。村上さんは、これからもここ亘理で、「変わらない味」を作り続ける。

看板商品「苺シルキー」を作る村上さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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