岩井畳商工店(仙台市太白区) 編み目の温もり小さく手元に 明治大2年 千葉茂樹

 指でなぞると、波打つ畳の編み目。千代紙を羽織った畳のコースターが並ぶ。若草、ピンク,やまぶき色の品々が色鮮やかに輝く。

 仙台市太白区長町南に店を構える創業約90年の老舗「岩井畳商工店」。3代目店主の岩井武宏さん(58)は、「有職(ゆうそく)畳」と呼ばれる伝統工芸品を作れる、高度な技術を持つ職人だ。普段は畳の新調や張り替えを熱心に取り組み、合間を縫って小物作りをしている。その成果を出品しているのが陸奥國分寺薬師堂(同市若林区)の手づくり市。3年前に誘われて以来、毎月その市へ出店し続けている理由がある。「身近なものを通して、たくさんの人に畳を知ってほしい」。

 小物を作り始めたのは、畳屋を継ぐために勉強をしていた19歳の頃だった。畳の技術の粋を集めた作品の展覧会へ行き、畳の奥深さに引き込まれた。本を頼りに見よう見まねで作った。サイコロ、枕、サッカーボール…。試行錯誤を繰り返し作り上げた達成感が、次の作品に挑む原動力となった。30歳で店を継いでからは、畳を注文した方に小物をプレゼントしていた時期があった。

 畳の現状は厳しい。東日本大震災を機に、一時的に需要は増えた。個人の依頼で石巻市へ行くと、その周囲の家からも新調を頼まれ、しばらくは多忙を極めた。息子の勇人(はやと)さん(28)の力を借り、すべての畳を作り終えた。しかし最近は、発注が少ない。フローリングや張り替えを必要としない化学繊維を使った畳が普及し、従来のわらで編んだ畳は時代遅れになりつつあるからだ。そんな中、息子が店を継いでくれた。「やっぱり嬉しいですよね」と笑みをこぼす。

 「どんなものにも挑戦する」と意気込む岩井さん。手づくり市へ来た人の声に応えて、新商品を売り出している。身近なものを手に取り、少しでも畳に興味を持ってほしい。職人として、父として、思いを込めて作り続ける。

工房で畳コースター作りに打ち込む岩井武宏さん。

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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