【D班原稿】ケヤキコーヒー(仙台市若林区)/地域の未来を開く一杯

中央大3年     坪倉淳子

東北公益文科大3年 新井洋平

東北芸術工科大2年 菊池みなと

 ドアを開けるとコーヒーの香りに包まれる。店主松木勇介さん(30)がひいた豆をプレス器に入れ、熱湯を注ぐ。待つこと4分。白いカップを満たす渾身(こんしん)の一杯。「ケヤキブレンドです」。妻の麻記さん(30)が笑顔で差し出した。

 カフェ「ケヤキコーヒー」は2016年夏、仙台市若林区荒井の新興住宅地にできた。内外装に木を使った17席。杜の都の象徴ケヤキのように、地域に深く根差す店を夢見る。「仙台を代表するカフェになり、人が集う場にしたい」。目指すのは東日本大震災で傷付いたふるさと・若林ににぎわいを取り戻すことだ。

 11年3月、勤務地の東京から帰ると、生まれ育った若林区荒浜は変わり果てていた。生家は内陸2キロまで流されていた。

 どうすれば力になれるのか-。カフェ巡りの趣味をヒントに、コーヒーの力で人が集う場を築こうと一念発起した。航空機整備士を辞め1年間、同時に3軒のコーヒー店で働き、基礎を学んだ。長野県・軽井沢にある国内屈指の人気店でも3年間技術を高め、独立をかなえた。

 「人生を賭けた店」は開店直後から軌道に乗った。師匠直伝の豆の風味を、磨いた技で余すことなく抽出する。「おいしい」。客は県内外から訪れる。

 店ではサイドメニューも人気だ。ケーキは若林区の洋菓子店から、パンは宮城野区の専門店からそれぞれ取り寄せている。客に「これおいしいね」と言われたら、地図や連絡先を記したカードを手渡し、「こちらへもどうぞ」。広く地域の求心力アップに気を配る。

 店のある荒井地区は、居住制限区域となった荒浜地区から内陸4キロに位置し、被災者らが暮らす新たな街づくりが進む。地下鉄東西線開業もあり、人口は急増。外から客を呼び込みつつ、住民のつながりを強められるか、地域の未来が懸かる。

 「店に居合わせた人の間に会話が生まれ、つながる。そんなカフェが目標です」

 開店から1年半。松木さんがフロアに目をやると、一杯のコーヒーを求める人たちで席は埋まっていた。

「コーヒーの力」でふるさとの復興の力になりたいと励む松木さん

河北新報社 記者と駆けるインターン

2012年夏にスタートした、大学生向けの記者体験プログラム。 東日本大震災の被災地で、人に会って話を聞き、大事なポイントを見つけ、限られた字数で記事にする―。 そうした体験は、ジャーナリスト志望者のみならず、どんな職種職業にもつながる「生きる力」を養います。 このブログでは、学生の活動成果である記事と、活動中の日々の様子などを随時発信していきます。 募集告知もこちらで行います。

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